省エネ建築の副次的効果を定量化する「NEBs」で生産施設/研修施設向け新指標を策定:カーボンニュートラル
NTTファシリティーズは、省エネ建築物の新築/改修による効果のうちエネルギー削減以外の価値を定量評価する指標「NEBs」について、生産施設/研修施設向けの新たな評価指標を策定した。
NTTファシリティーズは2026年2月2日、省エネ建築物の新築/改修による効果のうち、エネルギー削減以外の価値を定量評価する指標「Non-Energy Benefits(NEBs/ネブズ)」について、生産施設/研修施設向けの新たな評価指標を策定したと発表した。
今回、生産施設と研修施設に新評価指標を、公共施設(庁舎)には従来のオフィスビル向け算定ロジックを適用して評価を実施。その結果、いずれの施設でも光熱費削減効果のみで算定した場合と比べ、投資回収年数が約2分の1〜7分の1に短縮できると推計している。
NEBsは省エネ建築の効果を、光熱費削減に加えて「知的生産性の向上」や「健康増進」などの副次的な効果を含め、総合的に金額換算で評価する指標。NTTファシリティーズとデロイトトーマツは、2023年12月にオフィスビルを対象としたNEBs評価指標を公表し、施主の投資判断を支援してきた。
一方で、国土交通省の調査によると、非住宅建築物のうちオフィス用途は全体の約13%にとどまる。今回、脱炭素化に向けた設備投資や働きやすい環境整備が求められる生産施設、人的資本経営の観点から環境整備が進む研修施設を対象に、NEBs評価ロジックの開発/検証に取り組んだ。また、地域社会の活動や行政サービスを支える公共施設に対して、既存のNEBsを用いた評価を実施した。
生産施設/研修施設/公共施設で省エネ建物の効果を水景
生産施設向けのNEBs評価では、既存のオフィスビル版ロジックを基に、工場を「製造エリア」「事務所・研究エリア」「福利厚生エリア」に分けてベネフィットを整理した。製造エリアでは、空気環境の改善や熱中症対策による健康被害額の減少などを評価対象とした。福利厚生エリアはリフレッシュによる効果を追加、事務所/研究エリアはオフィスビルと同様のロジックを活用した。
新指標は大手自動車メーカーの工場建屋(延べ床面積約1万平方メートル、従業員約100人)の製造エリアを対象に検証を実施。工場ではオイルミストコレクター導入による作業環境改善と空調機器の運用改善を計画しており、その他は標準的な設備機器を導入している。
算定の結果、光熱費削減効果とNEBsを合わせた効果額は年間約2000万円、このうちNEBs効果額は約1030万円と推計された。NEBsを含めた場合の投資回収年数は、エネルギー削減効果のみで評価した場合と比べて約2分の1となる試算を示した
研修施設向けの評価では、既存の自社所有の事務所ビルを対象とした12項目のNEBs指標をベースに、教育/研修施設で発現するベネフィットを整理。知的生産性の向上や人材確保/定着といった効果を定量化するロジックを作成した。
研修施設版ロジックは「ダイダン八尾研修所」(延べ床面積約1300平方メートル、年間利用人数約180人)を対象に、所有者のダイダンに対してヒアリングを実施し、検証を行った。
算定の結果、光熱費削減効果とNEBsを合わせた効果額は年間約1300万円と算定され、そのうち約1100万円をNEBsが占めた。学習効率の向上による通常業務時の生産性向上に加え、研修を通じた人脈形成/関係強化による離職率低下や通常業務時のコミュニケーションコスト削減、採用力の強化など、研修施設ならではのベネフィットが発現することが推定された。
公共施設については、既存のオフィスビル向けNEBs算定ロジックを用いて、地方自治体の庁舎(延べ床面積約3万6000平方メートル、従業員約1500人)を対象に、職員へのアンケートやヒアリングによる検証を行った。対象庁舎では、主要設備の老朽化や災害時の業務継続性が課題となっており、改修に当たっては温室効果ガス排出量約40%削減(2013年度比)、災害時の業務継続性の確保や執務環境の改善などを図った。
検証の結果、庁舎全体での光熱費削減効果/NEBs効果額は年間約2億5900万円と推計され、このうちNEBsは約2億2100万円を占めた。NEBsを含めた評価では、投資回収年数がエネルギー削減効果のみの場合と比べて約7分の1になるとしている。
NTTファシリティーズは今後、大学などの教育機関や商業施設へでも評価が可能になるロジックの作成/検証を予定している。
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