8800人が訪れた建機のテーマパーク 「ミライ建機ランド」で体感する建設現場の未来:i-Construction 2.0(2/3 ページ)
建設分野の最新技術を一般ユーザーにも体感してもらう西尾レントオール主催のイベント「ミライ建機ランド」が、2025年11月に2年ぶりに開催された。会場では、建機の堅苦しい空気感を覆す熱気に包まれていた。子ども連れの家族から技術者、学生まで、3日間で8800人以上が訪れ、360度回転するバケットや建機の遠隔操作、建設向け3Dプリンタなど、未来の建設現場をつくる技術を直接目の当たりにする機会となった。
山岳トンネル工事の自動化/遠隔化を実現する「ニュースコーピオンGDX」
圧倒的な存在感を放っていたのが、巨大建機「ニュースコーピオンGDX:NSCPI-GDX」だ。山岳トンネル工事の自動化/遠隔化を推進する次世代のエレクター付きコンクリート吹付機(支保工建込とコンクリート吹付をする大型機械)で、本来はトンネル工事用の特殊建機のため、「青空の下で稼働するのは初めて」と担当者は紹介した。
ニュースコーピオンGDXの役割は、コンクリートを強力に吹き付け、構造物の品質と耐久性を確保することにある。熟練のオペレーターは、巨大なアームを正確に操作し、均一かつ強固なコンクリート層を形成する。
会場では大勢の親子連れが列をなし、作業員と共にGDXのバスケットに乗車。機能説明を聞きながら、巨大なスケールを体感した。バスケットから降りてきた家族連れに感想を聞くと、小学生が「すごく高かったけどあんまり怖くなかったから、何回でも乗りたい」とうれしそうに話してくれた。
多様性を包摂する建設業のビジョン“誰もがオペレーターに”
建機遠隔化のコーナーでは、操縦体験が複数のブースに設けられていた。遠隔操縦により、オペレーターは現場の暑さや寒さを気にせず、離れたオフィスなどの快適な環境から作業ができるため、労働環境の劇的な改善につながる。トンネル工事や災害復旧などをはじめ、危険な場所に近づかずに済み、安全対策としても極めて有効な技術だ。イベント担当者は「建機遠隔化の技術で、建設業の労働環境が今以上に良くなることを知ってもらいたい」と語った。
筆者が見学したときは、車いす利用者が操縦を体験していた。最初はラジコン操作の難しさに戸惑っていたが、インストラクター指導の下、目標のカラーコーンにバーを設置できた際は笑顔を浮かべていた。インタビューすると「実は小型重機のライセンスを持っている。こうした重機を腕だけで操作をできるようになり、障がいのある人も建設業で活躍していく未来となればいい」と期待を口にした。
こうした展示が示すのは、建機操作の技術進化が、身体的な制約を超えたインクルーシブな未来につながるというビジョンだろう。操作性の改善や遠隔操作技術の発展は、体力の多寡や身体能力にかかわらず、誰もが建設現場で活躍できる可能性を広げる。業界のイメージ変革を目指す本イベントの狙いとも強く結び付く、重要なメッセージだと感じた。
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