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“ウクライナ復興”に日本発の建機遠隔技術を キーウと神戸をつなぎ国交省が実証建機の遠隔施工(1/3 ページ)

戦争で荒廃が続くウクライナの復興に、数々の災害で活躍してきた日本の遠隔施工技術を用いるべく、約8000キロ離れたキーウと神戸をライブ接続し、建機のリモート操作を検証した。キーウの会場では研修を受けたばかりの女性がリモート操作し、「建設業=現場作業」の固定観念を覆して、“安全な場所から社会インフラを支える仕事”という新しい価値を提示した。

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 国土交通省とウクライナ政府は2025年10月9日、兵庫県神戸市中央区にあるコベルコ建機テクニカルトレーニングセンターで、キーウと神戸をつなぎ建設機械の遠隔施工をデモンストレーションした。参加者は、国交省の大臣官房技術調査課と総合政策局 海外プロジェクト推進課、民間企業は八千代エンジニヤリング、コーワテック、コベルコ建機、ソリトンシステムズ。

国交省の狙いとウクライナの現状――「安全、効率、包摂」の三本柱

キーウ会場
キーウ会場 提供:国土交通省

 今回の遠隔施工デモンストレーションは、国交省とウクライナ政府の共同実証として実施した。目的は、戦災で甚大な被害を受けたインフラの復旧/復興に、日本で培われた建機の遠隔施工技術を適用することにある。

 国交省によると、ウクライナでは道路や橋梁(きょうりょう)、上下水道などの被害が広範に及び、今後10年間で約5240億ドルにのぼる復興費用が必要とされている。現場では、爆撃による不発弾や地雷、アスベストなどの有害物質が残存し、作業員の安全確保が喫緊の課題となっている。また、戦地への動員や避難の影響により、労働力不足も深刻な状態にある。

 こうした状況を背景に、国交省は遠隔施工技術を「安全な労働環境」「複数現場の効率的運営」「誰もが働ける包摂的な就労機会」という三本柱で捉え、戦災地の課題解決に資する新たなビジネスモデルの構築を目指している。

遠隔施工のシステム構成図
遠隔施工のシステム構成図 提供:国土交通省

 日本国内の遠隔施工は、1990年代の雲仙普賢岳噴火災害に端を発し、30年以上にわたって改良を重ねてきた。火山噴火や地震、豪雨など、過酷な環境下でも作業員の安全を守りながら施工を続ける技術として発展してきた。

 今回の実証は、その知見を国際復興支援に応用する第一歩と位置付けている。国交省 官房審議官(技術、水管理・国土保全担当)の小島優氏は、「日本発の遠隔施工技術がウクライナの復興に貢献することを期待している」と述べた。

日本発の遠隔操作技術で、さまざまな境遇の人々が復興に携われるようになる
日本発の遠隔操作技術で、さまざまな境遇の人々が復興に携われるようになる 提供:国土交通省

 ウクライナ政府も、「建設業の若者の命を守る技術としてだけでなく、戦傷者や育児中の女性など工事現場に出られない人々も、遠隔で復旧/復興に参加できる可能性を秘めている」と高く評価。今回のデモを通じて、「危険を遠ざけ、人を生かす」の理念が両国の共通目標として明確化された。

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