AI活用9%の建設業界に活路 Arentの「アプリ連携型」と「AIブースト戦略」:第9回 JAPAN BUILD OSAKA(1/3 ページ)
Arentは、建設業界に特化したDXソリューションを展開する企業だ。2023年には東京証券取引所グロース市場に上場し、建設DXをけん引する存在として注目を集めている。代表取締役社長の鴨林広軌氏は建設DXの本質は「意識せず自然に使えること」とし、建設業で広がらないAI活用に対して、BIMを基盤に対話型生成AIを業務アプリに組み込む独自戦略を打ち出す。
2025年8月27〜29日の3日間にわたり、「第9回 JAPAN BUILD OSAKA−建築・土木・不動産の先端技術展−」が大阪府大阪市住之江区のインテックス大阪で開催された。JAPAN BUILDは、BIM/CIM、建設業向けAI、業務効率化システムなどが一堂に出展される建設業界の専門展示会で、毎年東京と大阪で開催されている。
会場では、業界トレンドセミナーとして、Arent(アレント) 鴨林広軌氏が「建設DXにおけるAI活用戦略」をテーマに講演した。本記事では講演内容を整理し、Arentが提唱する建設業界が直面する課題と未来への展望を紹介する。
DXの本質は「意識せずに使えること」
鴨林氏がまず強調したのは、DXの本質的な意味だ。「DXとは最新技術を単に導入することではなく、ユーザーが意識せず自然に使えている状態を指す」と述べた。スマートフォンでアプリを使う際、ユーザーはデータベースやシステム構造を意識しない。建設DXでもスマホと同様に、ユーザーが難しい仕組みを気にせず業務を遂行できることが理想的だ。
そのための最適解が「アプリ連携型」と鴨林氏は語った。競争優位性がある自社のコア技術をSaaS(Software as a Service)化し、コア以外の技術は市販ツールとAPIで連携して補う。逆に全社的な基幹システムを一枚岩で作り込む「ERP型」は、しばしばコスト増大やブラックボックス化を招く恐れがあり、数百億円規模の投資が失敗に終わるケースもあるという。
アプリ連携型のメリットは、柔軟性と拡張性にある。スマホに多様なアプリが存在し、必要に応じて連携するように、業務も小さなアプリ群がAPIでつながることで最適化される。「Salesforceの急成長がその象徴であり、巨大ERPを超える成果を一つのアプリが上げた事実は、アプリ連携型戦略の有効性を示している」と鴨林氏はいう。
建設業界でも同じ発想が当てはまる。共通業務には既存の市販SaaSを利用し、設計・施工といった業界特有の領域には独自のアプリを構築するすみ分けが、効率的で持続可能なDXの基盤となる。
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