大和ハウスグループがBIM×FMで座談会 研修施設「コトクリエ」で試みた“一気通貫BIM”【BIM×FM第8回】:BIM×FMで本格化する建設生産プロセス変革(8)(2/3 ページ)
本連載では、FMとデジタル情報に軸足を置き、建物/施設の運営や維持管理分野でのデジタル情報の活用について、JFMAの「BIM・FM研究部会」に所属する部会員が交代で執筆していく。本稿では、大和ハウスグループの研修施設「みらい価値共創センター」で、「一気通貫BIM」に挑戦したメンバーが、ファシリティマネジメント領域で導入した「BIM-FMシステム」についてディスカッションした座談会をお届けします。
――システム構築時に当初の期待とのギャップはありましたか?
西本 想像以上にシステム構築には苦労しました。BIMモデルに持たせるべきデータとFMシステムに必要なデータの切り分けが曖昧で、整理に時間が掛かりました。最終的には「迷ったらとにかくデータを入れておこう」という判断が続き、結果として情報の入力作業が過剰になってしまいました。
赤尾関 振り返ってみると、初期段階から大和ハウスさんと一緒に「AIR(Asset Information Requirements)」や「EIR(Employer's Information Requirements)」を整備しておくべきでした。その工程を軽視してしまった結果、システム構築までに50回以上の打ち合わせを行いながら、一つ一つ情報を精査していくことになりました。非常に大きな負担だったと思います。
河渡 私たちも必要なデータの優先順位が分からず、「とりあえず入れておく」という対応になっていました。しかし、BIM-FMシステムはあくまで業務システムであり、ビルメン業務そのものを理解したうえで、必要なデータを取捨選択すべきだったと感じています。
小田 私は統合モデルの構築に苦労しました。設備サブコンにFM用の属性情報を加えてもらうことはできたものの、意匠・設備・電気といった各モデルを統合する際、属性情報が想定どおりに反映されないことがありました。加えて、各サブコンが使用しているBIM/CADソフトが異なっていたため、データ連携の難しさを強く実感しました。
〜システム構築時のギャップ〜
- AIRやEIRの整備が不十分なまま進行し、必要情報の選別に手間がかかった。
- 「迷ったらとにかくデータを入れる」という判断が、BIMモデルの煩雑化を招いた。
- BIM/CADソフトの違いにより、属性情報が正しく受け渡されず、調整が必要だった。
- 統合モデル作成ではデータ欠損のリスクも表面化し、工程が複雑になった。
――システム運用時に当初の期待とのギャップはありましたか?
内田 BIMビュワーの動作が重く、一般的なスペックのPCでは読み込みに時間がかかってしまい、スムーズに操作するのが難しかった。私にとってBIM-FMシステムの中核はビュワーだったので、この点でギャップを感じました。
赤尾関 おっしゃる通り、コトクリエのように広くて複雑な形状の建物では、BIMモデルのデータ容量が大きくなり、ビュワーの動作にも影響しました。私たちにとっても想定外で、苦労したポイントの一つです。
内田 BIM-FMシステムと中央監視との連携では、中央監視からのアラートを基に、該当する場所をBIMビュワー上で自動的に表示し、そのまま修繕依頼を出すという仕組みを構想していました。しかし、実際の運用では点検作業のたびに大量の作業依頼が発行される事態となり、対応に困りました。
小田 それに加え、紙ベースで管理されていたアナログ業務を一気にデジタル化したことで、現場には大きな負荷がかかりました。特に、複雑な形状の建物のBIMモデルはデータ量が膨大となり、結果的に「使いにくい」と感じられるシステムになってしまった側面もあります。必要な情報だけに絞ってモデルを軽量化する工夫が、運用段階では重要だと痛感しました。
〜システム運用時の課題〜
- 複雑かつ大規模な建物では、BIMモデルのデータ容量が増大し、ビュワーの動作が重くなる。
- 中央監視との連携においては、アラート処理の設計を丁寧に行わないと、意図しない作業依頼が大量発行されるリスクがある。
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