北野建設と日立ソリューションズ、建設特化の生成AIで社内に埋もれたナレッジ活用へ:第9回 JAPAN BUILD TOKYO(1/2 ページ)
日立ソリューションズは長野県のゼネコン北野建設と共に、建設業で生成AIを活用した社内ナレッジ活用の検証を行っている。そのために社内で書式などが統一されていない図面や技術文書、報告書といったデータの構造化と、施工管理アプリとも連携する。若手社員へのノウハウ継承やヒヤリハット事例の収集、週次報告書の自動作成などが可能なり、近い将来は外販も見据える。
日立ソリューションズは、「第9回 JAPAN BUILD TOKYO−建築の先端技術展−」(会期:2024年12月11〜13日、東京ビッグサイト)で、生成AIを建設業務に活用した開発中のサービスを2025年中のリリースに先立ち参考出品した。
建設業で生成AI活用には、統一化されていないデータの構造化が不可欠
今展で紹介した建設特化型の生成AIサービスは、2025年中の外販を予定している。先行して長野県の建設業で売上高トップランクの北野建設と2024年12月から、生成AI技術で建設技術の調査や書類作成などの現場業務を省力化するプロジェクトを開始している。
1946年に長野県長野市で創業した北野建設は、日立ソリューションズと2022年度の社内情報基盤システムの構築を皮切りに、全社を挙げた業務効率化を進めている。2023年度には紙の野帳のデジタル化にも着手し、今回のプロジェクトは建設会社の社内に蓄積されているが、埋もれてしまっている有益な情報=ナレッジ活用を目的に、生成AI活用を検証するプロジェクトとなる。
建設業界でも生成AIの活用は、書類作成のサポートや法令関連の検索、設計初期のイメージ生成などで浸透しつつあるが、まだ各社模索中なのが現状。また、Microsoft CopilotやGeminiなど一般的な生成AIサービスでは、建設業務の自動化や支援に対応できないケースも多い。それはAIモデルが学習する基となる教師データが建設に特化しておらず、プロンプト(AIへの指示)で満足な回答が得られないためだ。
そのため、建設業務で真に生成AIを使いこなすには、社内に散逸している膨大なプロジェクトの資料や図面、施工手順書、技術文書などをまずデータ化しなければならない。
そこで北野建設とのプロジェクトでは、クラウドのMicrosoft Azure上で「ChatGPT」とテキスト生成とデータベースの検索機能を組み合わせた技術「RAG」を用い、国土交通省の公開資料や北野建設内にある膨大な資料のうち、文字、図と画像、表の3つのデータを構造化して「ベクトルDB」化した。
ベクトルDBは、情報を数値表現のベクトルとして保存するデータベースのことで、ExcelやCADのデータが構造化=標準化されるために生成AIが扱えるようになる。PCやタブレットのチャットボットを介して自然言語で問いかければ、生成AIが業務に関する社内外の有用な情報を収集して、建設業特有の標準フローやルールに沿って回答してくれる。
データの構造化にはAzureベースだけでは正確性に欠けるため、日立ソリューションズでは人の手でデータの種別ごとにテンプレートを用意して分けたり、各社固有の書式やガイドラインがあれば個別対応したりする。また、建設業に応じた最適な回答を導き出すには、プロンプトエンジニアリングで建設分野に準じたノウハウをAIモデルにあらかじめ仕込んおくこともあり得るという。
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