能登半島地震の災害廃棄物処理にICT活用、種類と量を推定 奥村組:スマートコンストラクション
奥村組は石川県珠洲市と輪島市の災害廃棄物仮置場で、ICTを活用した災害廃棄物の分類/体積の算出に関する実証実験を行い、有効性を確認した。
奥村組は2025年1月27日、能登半島地震被災地の石川県珠洲市と輪島市で、ICT(情報通信技術)を活用した災害廃棄物の分類と体積の算出に関する実証実験を行い、有効性を確認したと発表した。
実証実験は2024年11月に災害廃棄物仮置場で実施し、画像解析などを使用して災害廃棄物の種類と量の推定に取り組んだ。
種類の推定には、可視光線の波長領域外(900〜1700ナノメートル)まで撮影可能な「ハイパースペクトルカメラ(HSC)」を用いて画像解析を行い、多様なごみが混在する災害廃棄物を種類別に分類できることを確認した。一般的なカメラは入射光を光の三原色(赤/緑/青)の3波長帯に分解し、重ね合わせによって可視光情報を表現する。これに対し、HSCはより広範囲な波長領域を多数の波長帯で分解できるため、通常のカメラで撮影した画像からは判別できない材質の違いなどを識別できる。
量の推定には、LiDARセンサーを搭載したiPhoneとGNSS位置情報を組み合わせた地上撮影と、ドローンによる空撮を併用。撮影した画像から点群データを取得し、3D化することで廃棄物の体積が算出できることを実証した。
近年、自然災害の頻発化/激甚化に伴い、大量の災害廃棄物が発生している。被災自治体は「災害廃棄物処理実行計画」の策定にあたり、発生した災害廃棄物の種類と量を迅速に把握する必要がある。しかし従来の方法では把握に多くの時間と労力を要していたことから、リモートセンシングなどのICTを活用した効率的な推計手法の開発が課題となっていた。
奥村組は今後も災害廃棄物の処理に関する研究開発を継続し、再資源化率向上と処理の効率化を推進する。
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