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住宅市場の急変で大和ハウスが方針転換 セミオーダー強化や体制変革で2027年度に1万棟販売産業動向(1/2 ページ)

ここ数年、建設費の高騰や実質賃金の低下などを理由に、消費者の住宅購入意欲が低下している。大和ハウス工業はこうした背景を受け、戸建住宅事業の方針転換を図る。3階建て以上の高額商品や海外注力から、国内での分譲住宅の体制強化とセミオーダーや規格といったコストを抑えた注文住宅にシフトチェンジし、2027年度に年間販売棟数で1万棟を目指す。2024年問題や東京都の太陽光発電設置の義務化などの課題に対しても、これからの住宅市場に適合した組織づくりで対応していく。

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 近年、戸建て住宅市場は建設費の高騰に加え、物価上昇による実質賃金の低下で、消費者の住宅購入マインドは低迷している。データでみても持家着工数は2021年12月以降、29カ月連続で前年比割れとなっており、業界全体で対応を迫られている。

建設費の高騰などを背景に、持家着工数の減少が続く
建設費の高騰などを背景に、持家着工数の減少が続く 提供:大和ハウス工業

高額商品からセミオーダーや分譲拡大へシフトチェンジ

 大和ハウス工業はこれまでM&Aなどにより、海外市場にも力を入れてきた。特に米国ではホームビルダー子会社となったStanley Martin Holdings(スタンレーマーチン)、Trumark(トゥルーマーク)、CastleRock Communities(キャッスルロック)の3社が地域密着型の事業を展開。米国の住宅市場で順調に推移し、2022年度の戸建て住宅事業の売上高8763億円のうち4301億円を海外市場が占めた。2023年度は9510億円のうち海外は4967億円と好調を維持したが、コストアップも絡み営業利益は下がっている。そのため海外市場だけでなく、改めて国内市場の強化を図る局面にある。

 国内の引き渡し棟数は、5年ほど前まで一年間に1万棟程度で推移していた。近年は3〜5階建ての高額商品の受注に狙いを定め、1棟当たりの単価を上げる方向で事業に取り組んでいた。だが現況の引き渡し棟数をみると、2023年度は分譲が1760棟、請負が3424棟にとどまっている。方針転換の要因として、取締役 常務執行役員 住宅事業本部長 永瀬俊哉氏は「受注は取れているものの、需要は落ちてきている。もう一度方針を変え、社員1人あたりの生産性を挙げ、生産棟数と販売棟数を増やしたい」と話す。

 具体的な数値目標は、2025年度に請負3000億円、分譲4000棟、2027年度に請負3000棟、分譲7000棟の計1万棟を掲げる。

大和ハウス工業では規格やセミオーダーを強化し、多様なニーズ獲得を目指す
大和ハウス工業では規格やセミオーダーを強化し、多様なニーズ獲得を目指す 提供:大和ハウス工業

 2027年度の数値目標で請負にあたる注文住宅は、従来の注文住宅の受注棟数を維持しつつ、高額商品の投入に力を入れ、さらに住宅プランから選ぶ規格住宅やフルオーダーと規格の中間に位置するセミオーダーを強化する。

規格やセミオーダーの位置付け
規格やセミオーダーの位置付け 提供:大和ハウス工業

 近年は自由設計の高額商品が主力となっていた方針を転換し、良質でリーズナブルな商品を求める消費者を対象にセミオーダーや規格商品をラインアップ。

 注文住宅の新商品は、創業70周年の節目を記念し、注文住宅のフラグシップ「xevoΣ PREMIUM SMILE Edition(ジーヴォシグマ プレミアム スマイル エディション)」「PREMIUM GranWood SMILE Edition(プレミアム グランウッド スマイル エディション)」を投入。ZEH基準を上回る高断熱仕様やV2H(ビークルツーホーム)充電システムを備え、自社の最新フルスペック仕様を搭載した最上位パッケージを提案していく。

 高機能かつ高品質な規格住宅は「Smart Made Housing」、注文住宅と分譲住宅のいいとこ取りをした「Ready Made Housing」で、すぐにでも住宅が欲しい層へ訴求していく。「3階建て以上の高額商品から、短期間で住宅が建てられるなど多様な要望に応える住宅をそろえた。分譲住宅のうち規格やセミオーダーは5月末時点で41%だが、ゆくゆくは70%にしたい」と、永瀬氏は意気込みを語る。

多様な住宅ブランド展開で、従来にはない顧客層への訴求力を高める
多様な住宅ブランド展開で、従来にはない顧客層への訴求力を高める 提供:大和ハウス工業

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