中国の斜陽産業を調査「恒大グループなど不動産市況の混乱は建設業にも波及」:産業動向
リスクモンスターは、中国の不動産市況の悪化や消費マインドの低下、地政学リスクなどを受け、中国国内の斜陽産業を調査した。調査結果では、恒大グループなど大手デベロッパーの債務不履行に端を発した中国不動産市況の混乱が、不動産業だけでなく、建設業や採鉱業までに波及していることが明らかになった。
法人会員向けに与信管理クラウドサービスを提供するリスクモンスターは2024年8月26日、「中国における斜陽産業調査レポート」を発表した。
中国の斜陽産業を調査 恒大グループなど不動産市況の混乱は建設業にも波及
中国における2023年のGDP成長率は5.2%となり、政府が設定したGDP成長率目標は達成。しかし、中国経済の現状としては、不動産市況の低迷、消費者意欲の鈍化、地政学的リスク、地方財政の悪化など、多くの課題が残っており、今後の経済動向を不安視する声も多く上がっている。
こうした状況の中で、今回は、中国国内の上場企業5347社のうち、2022年と2023年の売上高を入手した5330社を分析し、業績が悪化している業種を調査した。
中国国内上場企業の2023年決算で4割超が「減収」
調査レポートによると、中国上場企業の2023年決算は、5330社の54.8%にあたる2922社が「増収」、41.2%となる2195社が「減収」で推移していることが分かった。
業種ごとの減収企業の割合は、「水利、環境、公共施設管理業」(減収企業割合61.9%)が最も高く、「不動産業」(同54.3%)、「採鉱業」(同49.2%)、「金融業」(同44.3%)、「建設業」(同43.2%)と続く。
減収企業の割合が高い上位5業種について、減収率の平均を集計すると、減収率が最も高かったのは、「不動産業」(減収率29.6%)で、次いで「水利、環境、公共施設」(同20.9%)、「建設業」(同20.4%)、「金融業」(同15.2%)、「採鉱業」(同15.0%)の順だった。
さらに、上位5業種について、3期連続減収の企業割合が最も高かった業種は、「不動産業」(3期連続減収企業割合14.3%)となり、以下、「水利・環境・公共施設」(同11.9%)、「建設業」(同10.5%)、「金融業」(同4.7%)、「採鉱業」(同0.0%)。
結果を受けてリスクモンスターは、不動産業の減収率平均が29.6%に達し、5業種の減収率平均17.3%より12.3ポイント高い水準となっている他、3期連続減収の企業割合が最も高く、業況悪化が目立っている。2020年8月に、政府介入によって不動産デベロッパーへの融資や銀行の住宅ローンが規制されたことを契機に、景況悪化が始まったとみられると分析している。
また、「恒大グループ」や「碧桂園グループ」を始めとする中国の巨大不動産デベロッパーが相次いで債務不履行(デフォルト)に陥り、開発投資意欲の低下を招き、不動産業だけでなく、建設業やその上流に位置する採鉱業の業績悪化につながっている。
また、不動産市況の悪化を受けた短期/長期ローンや住宅ローンの金利引き下げによる金融緩和政策が一因となり、金利による利ざや減少が金融業での減収企業の割合上昇につながったと推察できる。
中国政府は、金融緩和などの政策干渉で不動産不況の解消を目指しているが、効果は薄く、他業界における業況悪化や個人消費の低迷にまで影響が及んでいる。政府の対応が求められる中、2024年7月15〜18日に開催された「3中全会」では具体的な政策は発表されず、景気回復の見通しが立たない状況が続いている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 産業動向:「電気、設備工事、職別工事業で倒産増の懸念」アラームボックスが23年下期の倒産危険度の高い10業種を予測
アラームボックスは、1年以内に倒産する危険性がある“要警戒企業”の業種別ランキングをまとめた。建設関連では、電気業、設備工事業、職別工事業がランクインした。 - 不動産市況:ヒトカラメディアが2023年度首都圏版オフィス坪単価マップを公開、都心部600棟を独自調査
ヒトカラメディアは、独自に作成している首都圏を対象にした「オフィス坪単価マップ」の2023年版を公開した。 - ITで変わる、不動産業界の現在と未来(5):【第5回】高騰が続く住宅価格 不動産購入者の動向や住まいの最新ニーズをアットホームが調査分析
昨今、マンションや戸建て価格の高騰が続き、新築だけではなく中古物件の価格も上昇しています。そこで、アットホームが実施した「『住宅購入のプロセス&マインド』調査2022年度版」をもとに、過去2年以内の住宅価格の推移をはじめ、住まいに対するニーズの変化や重視する設備などをレポートします。 - 2022年BUILT年間記事ランキング:BIMやドローンなど建設ICTの動向に大きな進展があった1年、2022年「BUILT」記事ランキング
2022年にBUILTで公開された閲覧ランキングTop10の記事を紹介するとともに、1年間の“建設×テクノロジー”のトレンドも振り返ります。 - 電子ブックレット(BUILT):大手町ビル大改修の全貌とスマートビルを実現する警備ロボの実証
ウェブサイトに掲載した記事を印刷しても読みやすいPDF形式の「電子ブックレット」にまとめました。無料のBUILT読者会員に登録することで、ダウンロードすることができます。今回のブックレットは、三菱地所が東京都千代田区の「大手町ビル」で実施した大改修計画と、その先のスマートビルを実現する警備ロボットの実証実験のまとめです。 - 不動産市況:京都府の賃貸物件で人気の最寄り駅ランキング、総合1位は「今出川」駅
アットホームは、不動産情報サイト「アットホーム」における賃貸居住用物件のコーナーで、閲覧数が多い人気の駅をまとめた「アットホーム人気の駅ランキング 京都編」を公表した。ランキングでは、総合順位と単身世帯向け物件のカテゴリーで「今出川」駅が1位にランクインし、単身世帯を中心に今出川駅が人気なことが分かった。