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建築の省エネは削減余地が少ない“乾いた雑巾” 切り札は「エコチューニング」と「AI」ファシリティマネジメント フォーラム2024(1/3 ページ)

国の省エネ目標では、オフィスビルや商業施設などで、2030年度までに2013年度比で51%のCO2排出量を削減が求められている。建物の運用管理を担うファシリティマネジメント(FM)にとって、現状のままでは達成は容易ではないが、その切り札となるのが「後付け可能なエコチューニング」と「省エネAI」だという。

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 日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)は、「ファシリティマネジメント フォーラム2024(第18回 日本ファシリティマネジメント大会)」を東京都新宿区京王プラザホテルのリアル会場と、オンデマンド(配信期間:2024年2月22日〜3月18日)で開催した。

 「AIで進化する省エネ手法〜省エネ職人とAIの出会い〜」と題された企画講演には、AIスタートアップのアドダイス 代表取締役CEO 伊東大輔氏と、ビル設備管理専門会社のエス・ビー・エス 代表取締役社長 三輪直樹氏が登壇。「後付けで可能な省エネ手法」を共通項に、ファシリティマネジメント業界が抱える課題とそれを解決する手法=武器について、3部構成で紹介した。

厳しい省エネ目標 達成には「後付け」が不可欠

アドダイス 代表取締役CEO 伊東大輔氏
アドダイス 代表取締役CEO 伊東大輔氏

 第1部に登壇したのはアドダイスの伊東氏。アドダイスは、「AIで感動を伝える」を企業理念に掲げ、AIを用いた業務管理サービスや導入支援コンサルティングなどを展開するスタートアップ企業。

 伊東氏は、近年の電気代高騰に加え、2050年のカーボンニュートラル実現やその中間目標となる2030年度の2013年度比でCO2排出量46%削減など、国が定める省エネ目標値への到達が厳しくなっている現状を整理した。なかでも、2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画で、家庭や産業以外のオフィスビルや商業施設などの業務部門で、「2030年度までに2013年度比でCO2排出量を51%削減する必要がある」と強調し、ファシリティマネジメント(FM)業界が、乗り越えなければならない壁は高いとの認識を示した。

ファシリティマネジメント業界に突きつけられた厳しい現実
ファシリティマネジメント業界に突きつけられた厳しい現実 出典:アドダイス、エス・ビー・エス発表資料

 伊東氏はこうした壁に対して、コストと時間、そして建設時に排出されるCO2の観点から、最新設備を有するビルへの建て替えは解決策にならないと断言。では、既存建物で2030年の目標達成をいかに達成すればいいのか。その切り札となるのが、後付け可能なエコチューニングと省エネAIだとした。

 伊東氏の言うエコチューニングとは、個別設備機器の設定変更や微調整を、熟練技術を持つ省エネ職人が行うことで、建物の省エネ性能を底上げするエス・ビー・エスのサービスのこと。省エネを実現するAI技術は、施設を管理するシステムのモニター画面を人に代わってAIが読み取って最適に制御するアドダイスが開発した「SoLoMoN Technology AI(ソロモン テクノロジー AI)」のことだ。

 伊東氏は、「日本の建築における省エネは“乾いた雑巾”で、既に削減余地は少ない。しかし、経験を積んだ省エネ職人の手にかかれば、設備機器の運転効率化などで削減できる余地がかなりあることが分かった。さらにAIを使えば、人手をかけずに省エネ効果を点から面へと拡大し、部分ではなく全体最適化できる。経済面、環境面で大きなメリットがある」と話す。

 伊東氏は、AIとエコチューニングの関係を改造車レースの運転手と整備士に例える。同じ車でも運転の仕方で燃費は変わる。AIが運転を微調整して最適化することで、既存建物の省エネ性能を引き出せる。一方、AIの手が届かない詳細な設定や調整は、整備士である省エネ職人がチューニングすることで、建物の省エネ性能の底上げにつなげるというわけだ。

共に補完し合うAIとエコチューニングの関係
共に補完し合うAIとエコチューニングの関係 出典:アドダイス、エス・ビー・エス発表資料

 伊東氏は、AIと省エネ職人の手は、それぞれが「建物を建て替えることなく、後付けで省エネ性能を引き出す武器だ」と位置付ける。さらに、省エネ職人のノウハウなどの経験値をAIが学習することで、「導入後も時間の経過とともに省エネ性能をより一層引き上げられる」と、今後の協業への期待を語った。

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