元鉄筋職人のCEOが語る「人とロボットが協働する未来の現場」 鉄筋結束ロボット「トモロボ」の誕生秘話:第8回 JAPAN BUILD TOKYO(2/3 ページ)
労働力不足が叫ばれる建設業界では、作業効率化に向けた取り組みが進んでいるが、その中でも人に代わって現場作業を行う、いわゆる“建設ロボット”は効果が発揮されやすい。建設作業では、作業の姿勢や強度で人にとっては過酷なものが多い。それをロボットが代替すれば、その分の人手が他の作業や工程にまわせることになる。
2時間の連続結束で、職人の手を煩わせることは無くなった
トモロボは鉄筋結束を行うロボットだが、結束を行う機構は搭載していない。トモロボは、文具やオフィス機器、建設工具を販売するマックス製の電動結束工具を標準で取り付けている。眞部氏は、「マックスの結束機は(使い勝手や性能が)良かった」と、結束機構をコストを掛けて自社開発するのではなく、既存製品を使う理由を説明した。
ただ、結束に使うワイヤの供給は、マックスと共同で供給システムを開発した。供給システムにより、トモロボはワイヤ追加のための停止なしで、2時間の連続結束が可能となった。
2時間の連続結束ができるということは、ワイヤ供給を作業の休憩時間(10時、12時、15時など)に行えばいいことになる。そのため、作業中の職人の手を止めないロボットが実現した。
結束職人の“使わない理由”を無くす
建ロボテックは、建設現場の作業を「高度技術作業」「一般技術作業」「単純作業/重作業」の3つに分類し、ロボットが担うカテゴリーを「単純作業/重作業」と位置付ける。その理由を眞部氏は「安くロボットが作れるから」と語る。
高度技術作業や一般技術作業をロボットで処理しようとすると、センサーの数が増え、プログラムも複雑になる。建ロボテックでは、単純でありながら苦痛や危険を伴う作業をロボットで代替することを目指している。実現すれば作業員1人あたりの生産性向上につながり、労働職から技術職への転換も可能になる。眞部氏は、こうしたメリットによって建設業が抱える数々の問題(労働条件の改善、労働力問題、事業継承問題など)に寄与できるとの考えを示した。
トモロボは、こうした事業方針に基づき、2020年にリリースし、2020年1〜7月時点で各地域のトップに位置する鉄筋工事会社20社が購入した。レンタルでは、2022年1月〜2023年10月までに125の現場で稼働し、将来は従量課金制で提供する方針だ。
トモロボは、継続してバージョンアップを続けている。2023年末の最新版は“X3”で、前バージョンの“X2”に比べて1.35倍の結束スピードを実現し、1日で2000カ所以上の結束が可能となる。
機能強化を日夜続けるトモロボだが、眞部氏は現場導入するには現場の職人から発せられる“使わない理由”に対応する必要があったと口にする。
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