新たな芽をいつか森に、清水建設がイノベーション拠点でゼネコンの枠を超えて目指す姿:温故創新の森「NOVARE」探訪(前編)(2/5 ページ)
スマートイノベーションカンパニーを目指し建設を超えた領域でのイノベーションを推進する清水建設。イノベーション創出のための重要拠点として新たに2023年9月に設立したのが「温故創新の森『NOVARE』」だ。本稿では、前編でNOVAREの全体像を紹介し、後編ではDXによる新たな空間創出への取り組みを紹介する。
イノベーションのプロセスに合わせた空間を作るNOVARE Hub
NOVAREの5つの施設の内、イノベーションの創出に大きな役割を果たすと期待されているのが、NOVARE Hubだ。NOVARE Hubは空間そのものがイノベーションを生み出すために最適な実践の場となっている。具体的には、イノベーションのプロセスである「課題の発見(Discover)」「仮説の立案(Define)」「検証と実践(Refine)」「社会実装(Scale)」に沿った形で施設が構築されていることが特徴だ。
例えば、課題の発見や仮設の立案などについては、関係者のヒアリングやディスカッションが重要になるため、多拠点会議システムなどを備えたミーティングルームなどを用意。さらに、自由な視点でメンバーなどを入れ替えながらの議論ができるように、移動式家具やPoE照明、各種無線通信、個別空調などの完全レイアウトフリー環境を実現している。
そもそも、現在の座席を共用する「フリーアドレス」は1987年3月に清水建設の技術研究所で世界で初めて実現されたとしており、NOVAREではさらにその先の「ノーアドレス」を目指しているという。そのため、人だけでなくモノにもサイバー空間上のアドレスを与え、これらを個別制御することで、フィジカル空間上のどの場所にいても個別最適化が可能な環境を創り出した。例えば、照明はPoE照明を採用し建物全体を1つのネットワークでつなぎ一元制御を行うことができる。さらに、空調は「ピクセルフロー」とする超個別空調システムを採用した。タグによる個人の位置情報を特定し、個別制御するファンによりその範囲に最適な温熱環境を実現する。
清水建設 NOVARE DXエヴァンジェリストの及川洋光氏は「NOVAREでさまざまなイノベーションを生み出していける施設とするだけでなく、清水建設として新たな空間の創出につながるさまざまな技術を盛り込んでいることが特徴だ。清水建設としてのイノベーションに貢献するだけでなく、新たな技術の発信や体験できる施設として、将来の空間の価値をパートナーと一緒に探求していく」と述べている。
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