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最も厳しい“景観条例”の京都市で実現、外皮を変えない既存建物のZEB化ZEB(1/3 ページ)

京都市は、民間企業の技術を活用した公民連携の課題解決推進事業「KYOTO CITY OPEN LABO」を展開している。その一環で、パナソニック エレクトリックワークス社は、市と連携して、既存建物をZEB化するプロジェクトに乗り出した。

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 2020年10月に当時の菅内閣総理大臣は、2050年までに、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すと宣言。以降、あらゆる産業で、実現に向けた活動が始まり、多くの地方公共団体でもゼロカーボン社会への取り組みを表明している。京都市も、表明している自治体の1つだ。

京都市の建物は外皮を変更しないZEB化に向いている?

 ただ、京都市には他の自治体と事情が異なる点がある。それは日本で最も厳しいとされる景観条例によって、市街地のほぼ全域で古都の雰囲気を壊す外観の建築ができないことだ。にもかかわらず、京都市域のエネルギーは、その大半が建築物の運用で消費されているという。つまり、2050年までに京都市でカーボンニュートラルを実現するには、既存建築物の外観を変えず、脱炭素化しなければならない。

 こうした特殊な状況にあって、パナソニック エレクトリックワークス社は複数の省エネ技術を組み合わせたノウハウをKYOTO CITY OPEN LABOに活用している。

 KYOTO CITY OPEN LABOは、民間企業が技術やノウハウ、アイデアなどを市役所の担当部署に提案する窓口となる。採択されれば、担当部署と民間企業が協力しながら課題解決に取り組む。

 今回、紹介する既存建築物の外皮を変更しないZEB化は、窓口にパナソニック エレクトリックワークス社が応募してスタートした。

京都市における既存建築部の外皮を変更しないZEB化について説明する京都市 環境政策局 地球温暖化対策室 エネルギー事業推進課長 土井知信氏(右)、パナソニック エレクトリックワークス社 京都電材営業所 営業所長 橋本文隆氏(左)
京都市における既存建築部の外皮を変更しないZEB化について説明する京都市環境政策局 地球温暖化対策室 エネルギー事業推進課長 土井知信氏(右)、パナソニック エレクトリックワークス社 京都電材営業所 営業所長 橋本文隆氏(左) 筆者撮影

今回のZEB化可能性調査は10件程度を想定

 京都市の既存建築物のZEB化は、まず市所有の物件以外に民間も含む対象建築物を募集することから始まる。応募のあった物件は、築年数、延べ床面積、構造などから外皮の改修を行わずにZEB化が実現できるか否かを審査し、実現可能性の高いものを選ぶ。この後、選定した建築物に対し、現地調査や図面確認調査を経て、具体的な改修手法などの検討に至る。

 パナソニック エレクトリックワークス社 京都電材営業所 営業所長 橋本文隆氏は、「全ての建物が簡単にZEB化できるわけではない」とし、難易度調査や可能性を探る調査の必要性を説明した。今回は、ZEB化の可能性調査では10件程度を想定し、本来は有料となる可能性調査費は無料になる。

 スケジュールとしては、物件募集を2023年11月上旬から開始。11月下旬をめどにZEB化の実現性が高い物件を選出し、12月から2024年2月にかけて現地調査などの詳細な可能性調査と改修手法の検討が行われる。

パナソニック エレクトリックワークス社が「KYOTO CITY OPEN LABO」に対して行った提案の概要。ZEB化の認知度向上や改修した建築物のショールーム化支援も含まれている
パナソニック エレクトリックワークス社が「KYOTO CITY OPEN LABO」に対して行った提案の概要。ZEB化の認知度向上や改修した建築物のショールーム化支援も含まれている 提供:パナソニック エレクトリックワークス社

 建物の外皮に手を加えない既存建築物のZEB化では、照明、空調、給湯といった設備の改修や更新で省エネを図る。その際に補助金が使えることもあり、そのサポートやアドバイスもパナソニック エレクトリックワークス社が担う。

 橋本氏は、京都の既存建築物は「景観条例などもあって、いい意味で建物が大規模になり過ぎていない」とし、「応募の対象となる広さ(延べ床面積:4000平方メートル未満)に合致するものが多くある。京都市で得た知見や手法は、他の自治体でも外皮に手を加えないZEB化を展開する際にも役立つはず」との考えを示した。

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