技研製作所が“圧入”DXで目指す売上高1000億円 東京〜高知の遠隔施工に成功:2050年にディーゼル機ゼロへ(3/3 ページ)
技研製作所は、地盤工事でグローバルに展開する「圧入施工」の遠隔操作をデジタルツインで実現した。数百キロ離れた場所にいるオペレーターがラジコンのように操作するだけで、AIの自動調整で杭のズレは10ミリ以内に収まる施工品質が保てる。2024年問題に応じる省人化だけでなく、海外現場で熟練者の配置や人材育成も不要となる。
2050年に完全“脱ディーゼル”へ
インプラント NAVIやIoTセンサーで得た圧入機や地盤データのさらなる活用も既に検討が始まっている。全国の施工現場の圧入機や地盤データをクラウドに上げ、スマートフォンやPC、タブレットなどでどこにいても、機械情報や施工データ、位置情報を確認可能にする仕組みを2023年8月から、社内運用を開始している。クラウドに蓄積するデータは、AI学習で、最適な自律施工の手法を検討することにも役立てられる。
また、BIM/CIM活用では、3D測量の点群データとBIMモデルを融合させた提案ツールも、2024年5月からテストを予定している。現状では現場踏査〜工程計画〜原価計算まで3〜4日かかる技術提案が、現場で即日、3Dイメージ作成や積算が回答可能になり、災害復旧など迅速な判断が求められるときに有効となる。
省人化とは異なる脱炭素化の潮流には、圧入機パワーユニットの電動化を計画。2022年にオランダのプロジェクトで電動「ジャイロパイラー」導入を起点に、現行のディーゼルから、バイオ燃料、合成燃料、水素に順次切り替え、電動:外部給電/バッテリー式/燃料電池/全固体電池と、選択肢の幅を広げていく。温室効果ガス排出の低減に向けたロードマップでは、ディーゼル比率を2027年に50%、2050年にはゼロ、完全脱ディーゼルを掲げる。
「現在は国内外で2000台が稼働しているため、自動運転、遠隔操作、電動化に対応した次世代型圧入機を順次市場投入し、2027年までに新機能をフルラインアップで搭載する。将来は国土交通省でGXの安全性が確立されれば、工事成績評定の加点にもなるはずなので、その際には電動化やバイオ燃料への転換を加速させるつもりだ」(森部氏)
他の事業展開でインフラ老朽化対策では、河川(玉石層)や山間部(岩盤層)など適用地盤の拡大、建物に密着するゼロ近接や橋脚部の低空頭、さらに防水や水中など、圧入機の施工領域を広げ、インフラリメークを推進。森部氏は、「これから首都高速や阪神高速の大改修が控えており、狭い現場での需要は必ず増えてくるはず」と需要を見込む。
施工範囲は、インフラ分野だけにとどまらず、まだ事例の少ない建築分野でも、自社工場で狭小地に応じる新たな基礎構造の開発をはじめ、ジャイロプレス工法による建築基礎杭、防衛関連施設整備、地下シェルター、地中壁の地中輸送路などへの応用も既に着手しているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 産業動向:技研製作所とダイヘン、EV用機械式駐車場での自動ワイヤレス充電の運用実証
技研製作所とダイヘンは共同で、EV用機械式駐車場での自動ワイヤレス充電の運用実証を開始した。技研製作所の小型EV専用機械式駐車場「EVエコパーク」に給電装置を設置している。 - 施工:オランダ“世界遺産運河”の護岸改修実証で、技研ヨーロッパによる圧入工程が完了
技研製作所グループの技研ヨーロッパを中心とする合弁会社「G-Kracht」が、オランダの世界遺産「アムステルダムの環状運河地域」を対象とした護岸改修にあたっての新技術開発プロジェクトで、パイロット施工の圧入工程を完了させた。 - 新工法:技研製作所、超低空頭対応の鋼管杭回転切削圧入機「ジャイロパイラー」開発
技研製作所は、都市部の橋梁などの上部クリアランス2.5メートルの空頭制限がある硬質地盤の現場において、直径1000ミリメートルの鋼管杭の圧入を実現する超低空頭対応の鋼管杭回転切削圧入機「ジャイロパイラー」を開発した。 - 導入事例:デン・ハーグ市の運河護岸改修事業に「ジャイロプレス工法」、実証施工中
技研製作所が製造販売する杭圧入引抜機「サイレントパイラー」による鋼管杭回転切削圧入工法「ジャイロプレス工法」が、オランダの「デン・ハーグ市における運河の護岸改修事業」に採用された。 - カーボンニュートラル:技研製作所、オフィスや工場全ての電力を100%再エネ電力に転換
技研製作所は、自社が所有するオフィスおよび工場全ての使用電力を、実質100%再生可能エネルギー由来の電力に転換した。同社が2020年度の実績をベースに試算したところ、年間約592tのCO2排出量削減が見込まれるという。 - 製品動向:アクティオが杭圧入引抜機「サイレントパイラー」の整備工場を東京・入谷に開設
アクティオは、レンタルでの取り扱いを開始した油圧式杭圧入引抜機「サイレントパイラーR」の専用整備工場を技研製作所の東京工場内に開設した。