改正省エネ法の対応実務のポイント、2024年度からの報告・任意開示にはどう対応すべき?:背景から実務の要点・今後のGXマネジメントまで解説(4/5 ページ)
2023年4月から施行された改正省エネ法。新たに再エネや非化石エネルギーの利用に関する内容を報告書に盛り込む必要があるなど、事業者はこれまでと異なる対応が求めらるようになりました。本稿ではこうした改正省エネ法に対する具体的な対応の要点や、今後の社会情勢を見据えたGXマネジメントのポイントまで解説します。
(4)定期報告書の任意開示制度
2006年に当時の国連事務総長であるアナン氏のもとでPRI(Principles for Responsible Investment ;責任投資原則)が策定されて以降、PRIの署名機関は増加するとともに、ESG投資への注目が高まっております。
日本でもコーポレートガバナンスコードが2021年6月に改訂され、サステナビリティを巡る課題への取り組みの開示が求められるほか、今年から有価証券報告書においてもサステナビリティに関する企業の取り組みの開示が義務化されたように、サステナビリティ情報の開示に対する要請も強まりつつあります。
こうした背景を受け、定期報告ベースでの開示により作業負担も軽減できることから、任意でホームページに定期報告内容を公表できる制度が本年度から試行運用され、次年度からは本格運用されていきます。
図12 任意開示制度のスケジュール 出典:資源エネルギー庁省エネポータルサイトウェブページ(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/disclosure/)
開示の宣言を行った企業については資源エネルギー庁ホームページで公表されるほか、省エネに関する補助金申請の加点にもつながります。また、CDP などで既に情報開示している企業は、本件においても近い将来に開示対応していくことが見込まれます。同業他社に劣後しないようにするためにも、積極的に開示していくことが望ましいでしょう。
なお、情報項目のうち、いくつかの項目に関しては開示するかどうかを選択できます。開示に際しては、競争戦略上、情報開示することで不利益を被る可能性がないか、吟味したうえで選択開示項目を決定することが肝要です。
図13 任意開示の対象とする情報項目 出典:任意開示制度開示シート説明資料(資源エネルギー庁省エネポータルサイトウェブページ)(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/disclosure/data/sheet_sample.pdf)
(5)支援実績を踏まえた傾向と対策
ここまで省エネ法の改正ポイントを見てきましたが、省エネ法報告に関する支援実績を振り返ると、どの事業者も今回の改正を受けた中長期計画書の作成にあたり、電力に関する一次換算係数としてどの値を報告に用いるべきか判断することに苦慮していると感じました。
来年度から改正内容を踏まえスタートする定期報告書においては、新たな電力一次換算係数を使用する表がさらに増えます(第2表1-1,1-2,第3表など)。そのため、ますます混乱することが想定されます。
まずは、使用している電力がどの種類に該当するかをきちんと把握するとともに、電気の種類及び報告内容によって電力一次換算係数が異なることを理解することが肝要です。
図14 各措置における電気の一次換算係数出典:2023 年度版 省エネルギー法 定期報告書・中長期計画書(特定事業者等)記入要領(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/support-tools/data/kojo-kinyuyoryo23_v.2.pdf)
また、本年度の省エネ法報告対応が終わったばかりですが、DRを実施した日数のカウントなど、次年度に向けて今の時点から準備しなければならないことについて認識できていない事業者も多くいる印象です。今回の改正内容は多岐にわたるため、今一度、改正に伴いどのような追加対応が必要になるか要点を押さえた上で、早期にその準備をしていくことをおすすめします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.