清水建設がPFAS汚染土壌の浄化試験を米国内で開始 国内で泡消火剤が散布された施設への適用見込む:施工
清水建設は、有機フッ素化合物に汚染された土壌の浄化試験を米国内で開始した。試験では、独自の土壌洗浄技術による除染効果を確かめて、需要の顕在化が見込まれるPFAS汚染土壌浄化事業での技術適用を目指す。
清水建設は2023年8月10日、独自の土壌洗浄技術について、人体への有害性が指摘されている「有機フッ素化合物(PFAS)」の汚染土壌への有効性を検証する試験に着手したと明らかにした。
試験場所は米国テキサス州で、米国内の実汚染サイトで採取されたPFAS汚染土壌を試料として使用する。
独自の土壌洗浄技術で土壌処理コストの削減が可能に
PFASは、疎水基と親水基を併せ持つ界面活性剤としての特性を有する人工化合物で、熱に強く、水と油の両方をはじく特質を備え、コーティング剤や泡消火剤など多様な製品に使用されている。
しかし、自然環境では分解されにくく、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。1990年代以降は、環境や生体への残留性/蓄積性が問題視されるようになり、代表的物質のペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)が「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」で規制対象物質に指定されるなど、世界各国で規制強化が進められている。
日本国内では、POPs条約の決定を受け、PFOS/PFOAが化学物質審査規制法(化審法)の第一種特定化学物質に指定され、製造/使用、輸出入の禁止や制限対象となっている。2020年には、水道水や公共用水域、地下水に対する水質管理目標の暫定指針値となるPFOSとPFOAの合計値で50ng/l(ナノグラムパーリットル)が設定されたが、多量の泡消火剤が使われてきた飛行場や基地周辺では、暫定指針値を上回るPFASが検出されるなど、環境汚染問題が顕在化している。
清水建設は、将来的な規制強化を見越し、2021年度からPFAS含有土壌や地下水の浄化技術の開発に取り組んできた。地下水汚染には、汚染物質を泡に付着させて分離/回収する泡沫分離法による浄化手法を確立。2022年度に沖縄県内で実施したPFAS汚染水の浄化実証試験では、国の暫定指針値の12倍(634ng/l)を超えるPFAS汚染水を濃度1ng/l以下まで浄化処理することに成功した。
一方で土壌汚染に対しては、多数の処理実績を有する当社独自の土壌洗浄技術の適用を目指した取り組みを進めてきた。
清水建設の土壌洗浄技術は、分級処理で汚染物質を土壌の細粒分に吸着し、集積させた後、水中の泡の表面に汚染粒子を付着させ、分離/回収する泡沫分離法を用いて洗浄処理土の浄化品質を高めている。洗浄処理土は埋戻しなどに再利用でき、焼却といった2次処理が必要な濃縮汚染土を大幅に減容化できるため、土壌処理コストの削減が図れる。これまでに、主に重金属や油、ダイオキシン類による汚染土壌の浄化に適用され、処理実績は約320万トンに上るという。
今回の米国での浄化実証試験では、土壌中のPFASの分級処理、細粒分に濃縮されたPFASの泡沫分離処理の実効性を検証し、処理効率を最大化できるPFAS汚染土壌洗浄技術の確立を目指す。
今後は、既にPFAS汚染土壌が軍用地などで顕在化し、規制面でも先行する米国の土壌浄化プロジェクトでの技術適用を進め、将来は日本国内で、PFASを含む泡消火剤が広範囲に散布された可能性のある施設、PFASを製造または使用していた事業所の土壌浄化での技術展開を視野に入れている。
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