建設業の基盤維持に向け「次世代建築リーダー育成コンソーシアム」を設立、清水建設など3者:産業動向
神奈川県立の神奈川工業高校、小山学園専門学校東京テクニカルカレッジ、清水建設の3者は、「次世代建築リーダー育成コンソーシアム」を設立した。
神奈川工業高校、小山学園専門学校東京テクニカルカレッジ、清水建設の三者は2023年3月27日、建設業の基盤維持に貢献することを目的に、産学連携契約を締結し、「次世代建築リーダー育成コンソーシアム」を設立したと発表した。
減少傾向が続く施工管理技術者の担い手を確保
日本国内では年間60兆円超の建設投資が続いており、大都市圏では大規模な建設プロジェクトがめじろ押しだが、プロジェクトを管理する施工管理技術者を志す学生は減少傾向にあり、将来にわたる技術者の担い手不足が顕在化している。
清水建設の採用活動でも、施工管理技術者計画数の確保はできているものの、応募者数は5年前に比べて2割程度減少。背景には需給バランスが逼迫(ひっぱく)していることがあり、即戦力となるキャリア採用も容易ではなく、このような傾向は企業規模や地域による例外がない状態となっている。
一方、工業高校や専門学校の建築系学科に進学する学生には、建築の職種といえば建築士というイメージが定着しており、入学する時点で施工管理技術者を志す学生はほぼゼロに等しい状況だ。しかし、入学後に施工管理技術者の職種を理解すると、その魅力から多くの学生が施工管理技術者を希望するという現状がある。
そこで神奈川工業高校、小山学園専門学校東京テクニカルカレッジ、清水建設は、学生の職業観や施工管理技術者の認知度などを分析し、施工管理という仕事に対する理解促進と必要なスキルやマインドの修得支援が、日本の施工管理技術者不足を解決して建設業の基盤維持に貢献できると考え、コンソーシアムの設立を決意するに至った。
7年間に及ぶ人財育成プログラムでは、1年次に神奈川工業高校 建設科で施工管理技術者に必要な基本的素養、2〜3年次からは東京テクニカルカレッジ建築監督科で施工管理技術者に必要な専門力に加え、企業人や社会人としての基本的能力を段階的に修得するための学習を提供していく。
こうした一貫教育の実施や提供に向け、両校は神奈川工業高校から東京テクニカルカレッジへの円滑な進学を図る制度を整備しつつ、学費支援などを含めた学習環境を提供する。
その中で清水建設は、教育プログラムの開発支援、教育現場や学生の就職活動の支援を担当。プログラム開発では、施工管理技術者に求められる素養や能力に関する情報を提供し、教育現場では、神奈川工業高校の生徒に対して、施工管理技術者の生の声による職業観の理解促進、現場や会社見学、職業体験を行う機会を創出する。また、東京テクニカルカレッジの学生には、メンタリングやインターンシップ、研究の課題提供、指導を行い、最終的にはプログラムを終了した学生の採用支援やグループ企業、取引企業などへの推薦などを行い、就職活動をサポートする。
コンソーシアムでは、教育機関が連携して新たな教育プログラムを学生に提供するだけではなく、学生を採用する側の企業が参画していることが特長だ。学生にとっては教育プログラムで施工管理技術者の生の声を聞くことができ、さらに職業体験もできるため、施工管理という仕事に対する理解を一層深めることが期待される。さらに、就職活動時に企業側から支援が得られるのは学生にとって大きなメリットとなる。
施工管理技術者不足は地域や企業規模を問わず、切実な問題になりつつある。ただ、建築学科を設置している工業高校や専門学校は各地に所在しているものの、施工管理技術者の育成に重点を置いた教育カリキュラムを提供している学校は皆無に等しいといっても過言ではない。そこで、コンソーシアムでは各地の工業高校や専門学校の参画を受け入れ、産学連携の後押しをし、7年間の人財育成プログラムを提供することで、より多くの施工管理技術者を社会に送り出す考えだ。
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