「あと施工せん断補強工法」の大径用自動削孔装置で削孔作業効率化実現、奥村組:新工法
奥村組は、既設RC構造物の補強工事に用いる「あと施工せん断補強工法」で、せん断補強筋挿入孔の削孔作業を効率化するための大径用自動削孔装置を実工事に適用し、所定性能を確認した。
奥村組は、既設鉄筋コンクリート構造物の補強工事に用いる「あと施工せん断補強工法」で、せん断補強筋挿入孔の削孔作業を効率化するために2020年8月に発表した大径用自動削孔装置を実工事に適用し、所定性能を確認したと2023年2月24日に発表した。
既設RC構造物の補強工事に伴う削孔作業を自動化
大径用自動削孔装置は、最大径φ40ミリ程度と比較的削孔径が大きく、削孔長が深い挿入孔に適用する。空圧削岩機は削孔方向に最大1200ミリ、上下方向に最大1750ミリ、左右方向に最大500ミリの範囲で移動し、削孔位置や削孔深さ、削孔数といった計画に従って自動削孔する。構造物内の事前探査で把握できなかった鉄筋などに接触した場合は、制御機能により、当該箇所の削孔作業を自動的に中断し、次の箇所に移る。
また、削岩機の先端部に装備した集塵(しゅうじん)カバーをコンクリート表面に押し付け、集塵機で吸引することで削孔時に発生する粉塵(ふんじん)飛散も防止する。
これまでに、既設鉄筋コンクリート壁試験体を用い、性能確認実験で人力施工と同等の精度を確保できることは確認していたが、今回は東京都下水道局発注の「蔵前水再生センターなど1カ所放流渠吐口耐震補強工事」で装置を初適用し、実工事で性能を検証した。
その結果、放流渠約20メートル区間の側壁に、170カ所の削孔径φ34ミリのあと施工せん断補強筋挿入孔を計画通りに自動削孔し、施工データも自動で記録した。実工事での適用で装置が要求される削孔精度も確保して、削孔作業を効率化できることが証明されたという。
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