2028年にCO2排出ゼロを掲げるパナソニック新潟工場、LED製品開発のマザー拠点を視察:LED(1/2 ページ)
パナソニックの新潟工場は、CO2排出ゼロを目指すプロジェクトを発足し、2028年の実現に向けて活動している。同工場は、省エネ性能に優れた一体型LED照明を生産するが、工場の省エネにも取り組む。工場全体としての省エネを通じて蓄積したノウハウを顧客の省エネ提案にも役立てる計画という。
パナソニックのライティング事業部では、国内に9カ所の製造拠点を置く。その中でも新潟県燕市にある新潟工場は、ライティング事業の“マザー工場”と位置付け、独自の“新潟モデル”を開発し、国内外の生産拠点に展開している。甲子園球場約4個分に相当する14万4000平方メートルもの広大な敷地内には、総建屋面積5万390平方メートルの第1〜第3工場と技術厚生棟が立地しており、このうち第2工場では、パナソニック エレクトリックワークス社の一体型LED照明の「iDシリーズ」をはじめとする施設用/防災用の照明器具を生産している。
優れた省エネ製品を製造するのと同時に、工場自体の省エネにも取り組んでおり、iDシリーズが累積出荷台数3000万台を突破した2019年には、「スマートファクトリー AWARD 2019」を受賞。「省エネ大賞」の「資源エネルギー庁長官賞」にも選出されている。
2012年12月10日の発売から10周年を迎える2022年12月には、iDシリーズの累計出荷数が5000万台を突破。製品リリース10周年を記念して2022年末、2028年に「CO2ゼロ達成」を目指す新潟工場を見学した。
ランプ部とホルダー部を一体化した「iDシリーズ」
LED照明は、オフィスの省エネ化に絶大な効果を発揮する。転機となってのは2011年3月11日に発生した東日本大震災による節電ニーズの高まりで、蛍光灯や水銀ランプからLEDランプへの置き換えが加速した。
LEDは、中村修二氏が日亜化学時代の1993年に、白色光源を可能にした高効率の青色発光ダイオードの開発に成功し、製品化の道が開いた。その後、パナソニックでは2002年にLED照明を発売し、2010年には直管形LEDランプの販売を開始。2019年3月末には水銀に関する水俣条約で水銀ランプなどの製造、輸出入が2020年以降は禁止されることを見越し、水銀を使用した蛍光灯照明器具の生産を終了し、LED生産へ完全に移行している。
省エネに役立つLEDランプだが、従来型の蛍光灯をLEDに置き換えるには注意点がある。既設の照明器具(ホルダー)に新しいLEDランプを取り付ける場合、組み合わせが適切でないと、発煙、発火、感電といった事故が発生する危険性がある。日本照明工業会では、事故を防ぐために工事の注意点をまとめたガイドラインを設けているが、順守しても古いホルダーを使うことには変わらない。
パナソニックが新潟工場で生産するiDシリーズは、こうした状況を踏まえ、ランプ部とホルダー部を一体化。従来のようにランプだけをLEDに交換するのではなく、ホルダーも含めた照明器具全てを交換することで、水銀ランプから安全にLED化が行える。
2012年に登場したiDシリーズは、デザイン性や施工性にも特徴がある。製品デザインは、器具の表面にネジがなく、空間へスッキリ収まる薄型を採用した。施工面では、バネと引掛け金具によって、工具無しで取り付けられるように設計されている。
また、iDシリーズ(LDL20/LDL40)は、ランプ部をガラス管とし、高い透過率を有する。さらに、2012年の登場以来、検証を重ね、発光効率も日々進化している。
2028年CO2排出量ゼロを目指す新潟工場のプロジェクト
新潟工場では、2013年に工場内の電力使用量を見える化するシステムを導入した。背景には、省エネ機器を生産/提案する拠点としての責務がある。
省エネへの取り組みは、新規塗料の開発と塗装プロセスの最適化、脱脂工程の蒸気レス化、粉体塗装の固化防止エアーのパルスフロー化など。2021年からは「新潟工場CO2ゼロプロジェクト」として、さらなるCO2削減に向けた検討を始めている。
パナソニックは、2030年にCO2排出ゼロを目標と定めているが、新潟工場は2年前倒しし、省エネ、創エネ、再エネ購入によって2028年の達成を目指している。
新潟工場のプロジェクトは、工場としてのCO2の排出をゼロにするだけにとどまらず、その過程で得たノウハウを顧客提案にフィードバックすることも見据えている。新潟工場のオフィススペースや公共スペースでの照明省エネ化は、そのまま一般顧客への提案にユースケースとしても生かせる。
新潟工場では、オフィスや公共スペース以外の製造エリアや物流エリアでも、省エネ実証を行い、第1弾でオフィス改修に着手している。
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