FCNTとティ・エム・エフ・アースの「遠隔臨場システム」をサムシングが地盤工事に採用:遠隔臨場
FCNTとティ・エム・エフ・アースが共同開発した専用スマートフォンとクラウドから成る遠隔臨場システムが、サムシングの地盤調査や地盤改良工事の遠隔監視や作業記録に採用された。クリアな映像を低遅延で送信し、動画は遠隔臨場としての利用や作業記録、比較検証などの用途に利用できる。
FCNTとティ・エム・エフ・アースは2023年1月19日、共同開発した遠隔臨場システムがサムシングの地盤工事の遠隔監視や作業記録に採用され、建設現場のDXを推進することで合意したと発表した。
LTE環境で、ほぼ途切れずにクリアな映像を低遅延で送信
建設現場の地盤調査や改良工事は、日本各地に点在する現場で起こるさまざまな状況に対し、作業員が現地に足を運び目視で確認して対応している。しかし、人手不足が進む昨今は、現場の安全を確保し、安定したサービスを提供するためにも遠隔臨場や遠隔支援の導入が求められている。特に現場の安全を確保する上では、隣接する建物との距離や寸法、大雨の後に水没している箇所などがないかを確実に把握することは重要事項となる。
サムシングでは、顧客からの依頼を受け、地盤調査や改良工事を建設予定地の基礎工事が行われる前に実施している。地盤調査では、現場状況を正確に把握した上で、建物荷重などを考慮して改良工事の必要性を検討している。現場状況の確認は、作業員が出向いて直接把握しなければならず、遠隔地では移動時間が負担となっている。作業現場では、予期せぬトラブルが発生することもあり、トラブル発生時の現場状況を検証する必要があるが、リアルタイムに把握することは困難だった。
こうした課題に対し、サムシングは高画質かつ低遅延で映像を送信できる高度な画像圧縮技術を用いたティ・エム・エフ・アースの遠隔臨場ソフトウェア「LINKEYES」を採用。現場の見える化に向け、実証実験を重ねた結果、管理者がPCで遠隔から状況を一目で確認できるようになった。
送信された映像はクラウド上に自動保存され、撮影したカメラと日時を指定するだけで、見たい映像が簡単に再生可能なため、リアルタイム確認だけではなく、寸法や部材の質感といった確認、トラブル発生時の検証にも役立てられる。また、高性能な手振れ補正機能により、作業員が移動しながら映像を撮影しても、遠隔で視聴している側は酔いにくい。オートフォーカス機能も搭載しているため、遠景からマクロまで、鮮明でひずみのない安定した映像を撮影する。
撮影端末は、耐久性に優れたFCNTの法人スマートフォン「arrows BZ02」を標準採用しており、現場で作業員が随時持ち歩いて映像を送信したり、スタンドに設置して定点観測したりも可能だ。保存された動画の再生は、多様な機能のある動画管理システム上で、日時を指定するだけ。
LINKEYESの通信帯域は、250kbpsに圧縮されているため、郊外など電波環境がよくない場所でも途切れることなくLTE通信でVPNを介して映像を送信し、データ通信量の抑制にもなるので通信料金の負担軽減につながる。
利用料金には通信費やクラウド利用料が含まれ、端末はレンタルと買い取りの両方をサポートしている。
FCNTとティ・エム・エフ・アースは今後、クラウドに蓄積された現場の映像データを報告や記録に活用すること以外にも、小型の外付けカメラをヘルメットに装備し、現場の細かい状況の遠隔監視の実現も検討していく。
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