道路の定期点検を手軽に効率化、AIを活用した「舗装損傷診断システム」の実力:建設技術展2022近畿
全国的に道路インフラの老朽化が深刻化しており、道路管理者が管轄する道路は膨大にあるため、従来の人力による定期点検で舗装の損傷状況などを把握することは困難だ。技術者が減少する中で、道路の健全性診断にAI技術を活用して効率化する動きが活発になっている。
福田道路は、「建設技術展2022近畿」(会期:2022年11月9〜10日、インテックス大阪)で、道路インフラの舗装状況をAIで判定できるシステム「マルチファインアイ」を展示した。路面を撮影した動画を基に自動で分析でき、人手を割かずに道路舗装の定期点検ができる。取得したデータを基に帳票も作成可能だ。
低コストで活用できるAIによる舗装損傷診断システム
従来の道路の舗装診断は主に道路管理者の職員の目視で行われてきた。しかし、近年は人手不足や道路インフラの老朽化を背景に、膨大な道路の状況をきちんと把握することは難しい。迅速で手軽に道路状況を把握できるソリューションが求められている。
福田道路が展示したマルチファイン アイはそうしたニーズを踏まえ、既存のGPS機能付きの車載ビデオカメラで撮影した映像を基に自動で路面のわだち掘れやひび割れなどの損傷度合いを点検できるツール。路面撮影した動画をAIに取り込むことで、国土交通省の舗装点検要領の診断区分に応じた3段階の評価が可能だ。これまでの診断に比べ、大幅な省力化や解析日数の削減が期待できる。
サービスの特徴としては人的・時間的コストだけでなく、費用面でも削減効果が見込める。データ取得は市販の機材で可能なため、大きな設備投資などは必要ない。導入に際して手軽に活用が可能なため、道路管理者にとってサービス導入の大きな後押しとなっている。
ブース展示で説明にあたった担当者は、「新しいツールというと特殊な資機材の購入など、導入コストがかかるイメージがあります。当社製品ではそうしたものは必要ありません。利用に向けたハードルは低く、手軽にAI技術に触れることができると好評です」と説明する。
こうした反響はブースに訪れる人々の反応からもうかがえる。同製品を活用した点検業務は2018年から開始し、展示会でのブース出展も重ねてきた。当初、ブースを訪れる道路管理者らはAIを活用したツールについて積極的な反応は薄かったという。近年は直接の問い合わせが増え、人手不足に課題を抱えている道路管理者がコスト面の安さや手軽さを評価するようになっている。
利用者のニーズに即したデータの提供も実現
開発のコンセプトとしては「道路管理者の立場や要望にできる限り応えること」に重点を置き、利用者のニーズにきめ細かに応えることができる点も大きく評価されている。
点検結果はCSVファイルで出力するとともに、動画(撮影路面)、写真、地図(破損箇所の色分け表示)で誰にとっても分かりやすく表示可能だ。各管理者の要望に応じた独自の帳票データの出力にも対応することができる。
ツールの導入でも福田道路に撮影から帳票作成までを委託することが通常だが、道路管理者が撮影したデータを解析することも可能となる。
道路管理者が抱える課題は各自治体や各団体で違う。その要求に応えることで福田道路のAI解析ツールは幅広い支持を得ている。
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