高速かつリアルタイムにAIで物体検出する「YOLO」、施工管理や安全確保など建設用途の先端事例【土木×AI第16回】:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(16)(1/2 ページ)
連載第16回は、建設業界でも幅広く現場適用が進んでいるAIによる“物体検知”の技術のなかでも、検出能力で高速処理とリアルタイム性を併せ持つ「YOLO」の建設分野での多様な先端事例を紹介します。
AIのなかでも、“物体検出”は建設業界で現場適用が進んでいる代表的な技術の1つです。今では、施工から維持管理までの各工程で幅広く用いられています。一例として点検では、下図のように、構造物の損傷をバウンディングボックスで検出するのが典型的な応用例です。
グリッドごとに物体検出を行うAIの物体検出技術「YOLO」
AIによる物体検出には、対象の領域推定を行った後、推定されたそれぞれの候補領域に対してクラス分類を行う2段階で検出する手法≪「R-CNN(Region Based Convolutional Neural Networks)」などと、入力画像を任意のグリッドに分解し、グリッドごとに物体検出を行う「YOLO」などの手法があります。
YOLOは、“You only look once”(一目見るだけでいい)の頭文字を取った言葉です。その名の通り、領域推定とクラス分類の2つの処理を単一のネットワーク内で行うことができるため、高速な処理が可能であり、特に、リアルタイム性が求められる問題への適用が広がっています。ちなみに、YOLOは、ラップのYOLO=“You only live once”(人生一度きり)の語呂合わせにもなっています。
下図は、YOLOの仕組みを示したものです。画像をグリッドに分け、そのグリッドごとに、物体が含まれているバウンディングボックスを推定するのと同時に、物体の分類の推定を行っています。文献2の「YOLOを用いた多種類橋梁損傷の同時検出」※2では、YOLOの高速性を生かし、UAV(ドローン)から撮影した橋梁(きょうりょう)の動画から多種類の損傷の検出を試みています。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
ここのところ建設現場では、定点カメラやタイムラプスカメラを設置し、施工状況を映像として記録するケースが増えています。映像には多種多様の情報が含まれており、建設現場のいろいろな課題を解決するための基礎データとしての利活用が検討されています。下図は、YOLOによる物体検出で、移動中のクレーンのフックに吊(つ)り下げた重量計測用のクレーンスケールと鉄筋を検出した例です。
このように、実際のクレーンの動きから、現場の生産性向上のためのデータを得ることができます。また、リアルタイムで検出することで、侵入してはいけない場所へ接近したときに、警告を発するなどの安全性対策に利用することもできるでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.