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“発注者”が意識すべきフロントローディング(後編)―ISO 19650にみる情報要求事項【日本列島BIM改革論:第6回】 日本列島BIM改革論〜建設業界の「危機構造」脱却へのシナリオ〜(6)(2/4 ページ)

建設費や工期の削減には、フロントローディングが必須となる。しかし、フロントローディングはBIMソフトを単にツールとして使うだけでは、到底実現できない。では何が必要かと言えば、発注者が自ら情報要求事項のマネジメントを行い、設計変更を起こさない仕組みを作り、意思決定を早期に企図しなければならない。これこそがBIMによる建設生産プロセス全体の改革につながる。今回は、現状の課題を確認したうえで、情報要求事項とそのマネジメント、設計段階でのバーチャルハンドオーバー(VHO)によるデジタルツインによる設計・施工などを解説し、発注者を含めたプロジェクトメンバー全体でどのように実現してゆくかを示したい。

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ISO 19650の「情報要求事項」とは?

 次に、ISO 19650の情報要求事項について説明する。情報要求事項は、ISO 19650-1で、下記のように記載されている。

発注組織は、組織又はプロジェクトの目的をサポートするために、資産やプロジェクトに関してどんな情報が要求されるかを理解することが望ましい。これらの要求事項は、自身の組織内または利害関係のある外部関係者から生じる。発注組織は、これらの要求事項を、自らの仕事を指定または通知するために、それらを知っていなければならない他の組織と個人に表現できることが求められる。

 また、発注組織が情報成果物を要求する目的にも記載があり、目的としては下記の内容が含まれるとしている。


発注組織が情報成果物を要求する目的

 こうした内容は、建物の設計・施工についての情報成果物ではなく、建物を運用するために必要となる情報だ。このように書かれている理由は、「発注者は建物を作るために作るのではなく、建物は使うために作る」ためである。

 つまり、何のために建物を作るかを想定した上で、どうやって建物を使うかを示し、そのためにどのような建物を作るのかの順番で情報要求事項を考えるというのが、ISO 19650の基本的な方針といえる。ISO 19650と同様の思考することで、発注組織の情報要求事項が明確になり、それを実現することで顧客満足度につながる。これは一見すると、当たり前のことのように思えるが、日本では現実にはなかなかできない。


3つの情報要求事項

 情報要求事項の関係性は下図のような相互関係となる。「何のために建物を作るか」という「組織の情報要求事項:OIR」は、建物をどのように使うかという「資産情報要求事項:AIR」と関連性が深い。より具体的な内容を示すという意味で、ISO 19650では「カプセル化」という表現を用いている。建物を作る上での情報要求事項「プロジェクト情報要求事項:PIR」は、OIRをもとに、設計・施工の諸条件(工期・コスト・仕様・品質・デザインなどの要求)を加味して作成される。


情報要求事項の関係性

 情報要求事項は、BIM先進国の英国では、数多くの項目が挙げられると聞いている。考えられるだけ全ての要求事項をここでリストアップしておくことが、要求を明確にすることになり、結果的に設計変更を減らし、満足度の高い建物を作り、建物利用者の供用に資するからである。さらに、情報要求事項自体は、設計事務所やゼネコンとの契約書の一部となる。

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