“ワークロイド元年”に下水道点検をDX!多脚式管渠調査ロボ「SPD1」を発表、テムザック:ロボット(2/3 ページ)
慢性的な人材不足に悩む、下水道管整備会社のニーズに応えるテムザックのクモ型ロボット「SPD1」。複数のロボットが群となって働き、それぞれが異なる役割をこなすことで、管渠内点検・調査業務の大幅な効率化を目指す。
クモのように8本の脚をもち、群で働くロボット
SPD1開発のきっかけは、そうした課題を抱える道路・下水道管整備会社からの依頼だった。
依頼を受けた当時、国内では下水道点検ロボットの現場導入が既に進んでおり、後発でロボット市場に参入することには懐疑的だったという。しかし、現場の声をヒアリングするなかで、国内の下水道点検ロボットの9割以上を占めるタイヤ走行式ロボットは、管内の流水や滞留する汚水、堆積物などの影響を受けやすいこと、ロボットが多機能化することで重量が増し、扱いにくいこと、細径の調査に向くタイヤ走行式ロボットがほとんどないことなどの課題が見えてきたという。
SPD1の最大の特徴は、日本で初めて管渠点検ロボットに多脚歩行式を採用した点にある。これにより、不安定な作業環境でも安定した走破性を実現した。8本の脚は、"クモ型"の名の由来にもなっている。
8本の脚には、管径に追従して角度を自動で変更するシステムを実装しており、直径の異なる管が連続しても1台で調査できる。対応管径はφ200〜300ミリで、懸案だった細管も問題なく対応する。
さらに、SPD1には、2018年に積水ハウスと共同開発した複数のロボット同士が自発的にコミュニケーションをとることで、各機の役割を分担する仕組みをブラッシュアップして搭載。これにより、1台のロボットの機能を限定することで、タイヤ式点検ロボットならば1台あたり20キロ程度となる重量を約3.5キロまでに抑えることに成功している。
電源は有線で供給する非バッテリー式(DC12.5V)を採用。ロボットの操作も、有線LANケーブルを介して、ゲーム機のコントローラーに似たデバイスで直感的に行える。
ロボットの台数、搭載する機能は柔軟に対応可能
テムザックのSPD1プロトタイプは、基本仕様(21×25×25センチ)、上部カメラ付き(21×25×28センチ)、360度カメラ付き(21×25×28センチ)の3タイプ。3機がワンユニットとなって、先頭が360度カメラで管全体を撮影し、気になる箇所を2台目のカメラで詳細に確認して、3台目はケーブルの運搬を担うというのが利用イメージ。
ただし、ロボットに装備する機能や一度に連結するロボット台数は、今回発表したモデルに限らない。テムザック 代表取締役社長 川久保勇次氏は、「今回は詳細な確認を担う2台目に上部カメラを装備しているが、今後は全周囲で詳細点検できるよう、360度カメラに変えることも考えている。また、カメラ以外のセンサーなどが欲しいという要望があれば、そうした機能を搭載したロボットをさらに連結させる、というケースも想定している」と話す。
今後は、2022年度中に提携する下水道調査会社の現場で実証実験を実施し、その結果を踏まえ、2023年度中に製品化する予定だ。最終販売価格は、3台一式編成で約600万円を予定している。2024年度からは、SPD1で培った技術をもとに、下水道管以外の、人が入れないような狭い空間での調査市場への水平展開を目指す。
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