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規制緩和で社会実装へ!マイクロ波によるワイヤレス給電は、未来のビルマネジメントをどう変えるか?BAS(1/3 ページ)

エイターリンクは、マイクロ波を使うことで、長距離のワイヤレス給電を可能にする「AirPlug」を開発した、AirPlugは17メートルを超える場所に安定した電力を供給できる技術で、バイオメディカル、製造、ビルマネジメントなどの複数の領域で導入が期待されている。既に竹中工務店では、AirPlugとIoTセンサーを組み合わせた室内空調ソリューションを構築し、実証を経て2022年9月から静岡営業所で本格運用している。

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 エイターリンクは、スタンフォード大学発のスタートアップ企業。CTOの田邉勇二氏は、スタンフォード大学のリサーチサイエンティストとして、バイオメディカルインプラントデバイス(体内に埋め込むタイプの医療機器)の研究開発を行ってきた。米粒サイズの心臓ペースメーカーを世界で初めて実現したのは、その成果の1つだ。

 ペースメーカーの開発を通じて獲得した“マイクロ波を使ったワイヤレス給電”の技術は、空間伝送型ワイヤレス給電システム「AirPlug(エアプラグ)」という名で製品化され、エイターリンクが商標を獲得している。

 エイターリンクのAirPlugは、17メートル以上離れた場所への給電、双方向通信、あらゆる角度に対応できるなどの特長を持ち、医療以外の分野でも利活用が見込まれている。

総務省と直接交渉し、長距離割やレス給電に関する省令の改正を実現


エイターリンク 代表取締役CEO 岩佐凌氏

 ワイヤレス給電はその名の通り、電気を送る際に“配線”を使わない給電方式だ。配線や端子などでの接触を行わずに給電する技術は、既にスマートフォンや電動歯ブラシなどで利用されている。しかし、AirPlugはその性能が全く異なる。

 AirPlugでは、給電にマイクロ波を用いており、そのため、遠くの場所にある機器に対しても給電が可能になる。通常、スマートフォンやタブレットなどの給電では、送信機とデバイスが近距離でないと機能しない。対して、AirPlugは最大17メートル離れた場所にも給電できるので、例えばオフィスの空間全体を給電可能なエリアにして、空間内であればどこにあっても給電を行うことが実現する。


東京・大手町のSAPと三菱地所が共同で手掛けたビジネス・イノベーション・スペース「Inspired.Lab」は、AirPlugの実証実験の場にもなっている。天井には複数の送信機が配備され、スペース内全体でAirPlugによる給電が行える

離れた場所にあるデバイスにマイクロ波で電力を供給するAirPlug。スマホの充電のように、“充電器”にデバイスを密着させる必要がない

AirPlugの受信機はテーブル天板の裏に設置。人に近い場所で常に各種情報を取得するため、大幅なオフィスレイアウトを変更しても機器があれば大掛かりな工事は不要

 AirPlugの給電が実用化した背景には、ワイヤレス給電に関する国の規制が緩和されたことが大きい。エイターリンク 代表取締役CEO 岩佐凌氏は、規制緩和に関してエイターリンクがリーダーとなり、総務省と交渉を行ってきたと話す。その結果、2022年5月26日に長距離ワイヤレス給電に関する省令「電波法施行規則等の一部を改正する省令(総務三八)」が改正され、AirPlugの正式運用が可能となった。

 その後、2022年9月26日に、無線電力伝送用構内無線局(WPT局)の第1号を取得し、これまで実証実験を行っていた竹中工務店の静岡営業所で、AirPlugの920MHz帯でのWPT局の本格運用を開始している。

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