セメント系改良地盤の新たな強度判定技術、適正量の固化材の混入を30分で判定:地盤改良工事
清水建設は、セメント系固化材を利用した地盤改良工事で、化学的手法を用いて、施工後における改良地盤の強度を早期に判定する技術「C−QUIC」を開発した。C−QUICは、セメントのアルカリ成分と酸の中和反応を利用して、改良直後に採取した未固結状態のソイルセメントに含まれるセメント量を推定するもので、改良地盤内に適正量の固化材が混入しているかどうかを30分程度で判定できる。C−QUICを活用すれば、改良地盤が固化するのを待たずに施工の良否を確かめられ、地盤改良工事の合理化が図れる。
清水建設は、セメント系固化材を利用した地盤改良工事で、化学的手法を用いて、施工後における改良地盤の強度を早期に判定する技術「C−QUIC」を開発したことを2022年10月3日に公表した。
混合試料の水素イオン濃度指数を測定することで材齢28日時点の強度を推定
地盤改良工事では、軟弱地盤にセメント系固化材を注入と攪拌することで、建設物を直接支持できる強度を付与する。改良地盤は従来、施工場所で採取したソイルセメントが固化するのを待ち、固化が進んだ材齢28日の試験体を圧縮試験にかけて強度を確かめる。その時点で強度不足と判定された場合には、再施工に膨大な手間がかかり工程の遅れに直結する。
上記の問題があるため、施工に当たっては、相応の安全率を見込んで固化材の使用量を決定している。しかし、施工直後に改良地盤の強度を判定可能とすれば、過大な安全率を見込む必要がなくなり、固化材の使用量と施工に伴うCO2排出量の削減が図れる。
そこで当社は、セメント系改良地盤の強度を短時間で判定する品質検査技術としてC-QUICを開発した。
C-QUICでは、施工直後に採取したソイルセメント試料に酸性の試薬を混合し、混合試料の水素イオン濃度指数(pH)を測定することで、セメント量を判定し、材齢28日時点の強度を推定する。試薬の混合量は、設計基準強度を満足するために試料内に含まれるべきセメント量に対し、そのアルカリ成分を全て中和させるのに必要な量に調整。
試薬を混合してから30分後に試料のpHがアルカリ性(pH:8.0以上)を維持していれば、強度の発現に必要十分なセメント量が改良地盤に含有されていると分かる。
なお、清水建設は、化学的手法によるソイルセメントの強度判定技術として、セメント系改良地盤より高い強度が求められる高支持力杭の根固め部ソイルセメントを対象にしたCW-QUICを2018年に開発・実用化しており、適用実績は300件以上に達している。
今後、CW-QUICと併せて、C-QUICの現場適用に注力し、地盤改良工事における施工の品質確保と合理化を促進するとともに、技術の外販に向けた準備を進めていく。
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