“空き家問題”を解決するベンチャー企業と自治体の「公民連携」最前線(下)〜クラッソーネの解体工事紹介サービスと南知多町の「官民共創」〜:空き家問題(1/2 ページ)
総務省の「住宅・土地統計調査」(2019年4月26日公表)によれば、国内の空き家数は一貫して増加し続け、1988年から2018年までの30年間には452万戸(114.7%)が増え、空き家率(空き家戸数が総住宅戸数に占める割合)も2018年には13.6%に達している。深刻化する「空き家問題」に対し、行政と民間が連携した取り組みが求められる一方で、現状ではハードルも多い。
空き家問題に官民連携で取り組む、クラッソーネ、AGE technologies、FANTAS technologyの民間企業3社と地方自治体が共同で2022年5月、「空き家施策における公民連携」をテーマとしたWebセミナーを開催した。上編に続き、下編ではクラッソーネと愛知県南知多町、神戸市の担当者も参加した自治体同士のトークセッションをレポート形式で振り返る。
空き家を減らすきっかけづくり「自治体版 解体費用シミュレーター」
クラッソーネは「空き家の除却」で不可欠な解体工事会社と空き家所有者、自治体をより良い形で結ぶマッチングサービスを展開。空き家所有者が除却工事を解体業者に直接発注することは難しく、多くは多数の仲介業者が間に入るために商流が複雑化し、料金も高額になりがち。クラッソーネのサービスでは、複数の解体工事会社のあいみつとして一括見積もりも含み、こうしたリスクが抑えられると執行役員の山田浩平氏はPRする。
登録工事会社はクラッソーネが独自に審査しており、利用者の口コミなどの評価も公開するため、価格から、工事の際の近隣対応、施工品質までを含めて業者が選べる。しかも安心保証制度などにより、工事会社の万一の倒産リスクや工事事故までサポートしている。
クラッソーネでは、サービスの運用を通じて蓄積した豊富な経験や技術を生かし、25を超える自治体と連携協定を結び、「自治体版 解体費用シミュレーター」の無償提供をはじめとする多様な支援や啓発を提供している。
空き家除却は、空き家所有者にとって、親族を含めて行う初めてのライフイベントであり、そもそも誰もが「どうすれば良いのか」分らないのが当然だと山田氏は語る。特に1.どう進めるのか?2.いくらくらいかかる?3.どこに頼めば良い?は高いハードルと感じられている。
そこでクラッソーネでは自治体との連携協定により、以下のようなサービスで応じている。1に対しては、解体工事の進め方を記載したフライヤーを作成したり「空き家対策セミナー」の講師を派遣し、2では自治体に合せてカスタマイズした解体費用シミュレーターを提供。3については、解体希望者に条件に合った解体業者を紹介している。
各自治体向けにカスタマイズした解体費用シミュレーターは既に20自治体で導入され、2021年度だけで1万4000件に利用され、利用者の半数ほどが「1年以内に工事したい」と語るなど、施主と解体工事会社のマッチングに貢献。今のところ、行政との連携は26〜27自治体だが、2022年度内にはさらに拡大させ、100自治体以上との提携を目指している。
空き家問題の先進地・南知多町が掲げる「空き家」×「公民連携」
最後に登壇したのは、愛知県南知多町 空き家対策係長 堤田健太氏。知多半島最南端の小自治体・南知多町は、愛知県で最も空き家率が高い空き家問題の先進地だ。2009年からは、移住・定住施策と連携し、空き家バンク制度を生かして空き家活用を進めてきた。
しかし、それでも空き家は増え続けたため、2014年に「南知多町空家などの適正な管理に関する条例」を施行。各種指導を行い、特定空き家の危険物件除却への補助制度も実施したが、問題解決にまでは至らなかった。空き家の老朽化が進む一方、補助金目的の管理放棄空き家をはじめ、相続登記の不備や相続放棄による所有者不在物件など、費用回収が見込めない物件など、さまざまな問題の累積により、出口の見えない状況になっている。
では、どうするか?といえば、予算がないなら金を使わずに問題に向き合うか、予算を稼ぐしかない。町は予算稼ぎは「ふるさと納税」などに任せ、予算を使わずに課題解決するため民間の力を借りようと考えた。
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