竹中工務店が「高流動・低収縮コンクリート」を開発、打設の省力化と施工性向上を実現：導入事例

竹中工務店は、竹本油脂と共同で、美観維持と耐久性向上に加えて高い流動性を備えた「高流動・低収縮コンクリート」を開発した。なお、竹中工務店は、同社が関連するプロジェクト「竹中大工道具館収蔵庫建替」工事に高流動・低収縮コンクリートを初適用し、竣工後1年を経てもコンクリート表面が美観を維持していることを確認している。

[BUILT]

　竹中工務店は、竹本油脂と共同で、美観維持と耐久性向上に加えて高い流動性を備えた「高流動・低収縮コンクリート」を開発したことを2022年9月2日に発表した。

複数の混和剤を添加する煩雑な作業は不要

　コンクリートは、砂や砂利、水をセメントで固めて作るため、水分の蒸発に伴う収縮によって表面に微細なひび割れが発生することがある。解決策として、水量を減らせば乾燥に伴うひび割れは低減するが、一方で流動性が損なわれるため施工しづらくなるという課題があった。そこで、竹中工務店は、竹本油脂とともに、高流動・低収縮コンクリートを開発した。

　高流動・低収縮コンクリートは、2007年に両社で開発した「低収縮コンクリート（適用実績は400件以上）」に、新開発の高性能AE減水剤※1を用いて改良したもので、従来の低収縮コンクリートが持つ美観維持機能や高い耐久性といった特徴だけでなく、高い流動性も備えている。これにより打設する際の作業を容易とし、施工性を大きく改善した。

※1 高性能AE減水剤：水やコンクリートに特別の性質を与えるために必要に応じて加える混和材料。今回、材料分離抵抗性能を有する一液ハイブリッド型の新高性能AE減水剤を新たに開発した。

「高流動・低収縮コンクリート」の基本特性　出典：東急不動産プレスリリース

　具体的には、新開発の高性能AE減水剤を使用しており、低収縮性と高流動性を兼ね備え、通常の壁をはじめ広範な部位に適用することができ、汎用性に優れる。

　加えて、従来の低収縮コンクリートと同様に、通常のコンクリートと比べ乾燥収縮量を約15〜25％減らせるだけでなく、ひび割れの発生を抑えることでコンクリートの中性化を遅らせ、美観維持と耐久性向上にも役立つ。

　さらに、高い流動性で、バイブレータなどによるコンクリートの充填と締固めに要する労力や時間を大幅に削減し、施工性の改善に貢献する他、全国の生コン工場で、新開発の高性能AE減水剤を通常の混和剤と同様の方法で添加することで、容易に製造可能なだけでなく、一液混和剤のため、複数の混和剤を添加する煩雑な作業は不要だ。こういった利点を持ちつつ、強度などの物理性能は普通のコンクリートと変わらない。

　なお、竹中工務店は、同社が関連するプロジェクト「竹中大工道具館収蔵庫建替」工事に高流動・低収縮コンクリートを初適用し、竣工後1年を経てもコンクリート表面が美観を維持していることを確認している。

高流動・低収縮コンクリートの適用事例、増築部の杉板本実化粧打ち放し仕上げの外壁　出典：東急不動産プレスリリース

竹中大工道具館収蔵庫建替プロジェクトの概要

　建物は、RC造地上3階建てで、延べ床面積は305.44平方メートル。所在地は兵庫県神戸市で、工期は2020年9月〜2021年4月。