山岳トンネル覆工の残コンクリートゼロを実現する覆工管理技術を開発、前田建設工業:山岳トンネル工事
インフロニア・ホールディングスグループの前田建設工業は、山岳トンネルにおける覆工コンクリートの打設状況を可視化する技術「覆工伝言板(覆工コンクリート打設自動管理システム)」を開発した。覆工伝言板は、セントルに設置されたモニター画面で打設を終えたコンクリートポンプ車の台数や型枠内のコンクリート打ち上がり状況と数量を確かめられる技術。モニター画面はオンラインで打設の状況を関係者に配信して情報を共有する。
インフロニア・ホールディングスグループの前田建設工業は、山岳トンネルにおける覆工コンクリートの打設状況を可視化する技術「覆工伝言板(覆工コンクリート打設自動管理システム)」を開発したことを2022年8月24日に公表した。
コンクリートポンプ車のピストン回数から打設した数量を算出
通常、覆工コンクリートの打設状況管理は、セントルに設置されている検査窓から目視で確認する。打設数量の計測や打設速度の管理は、覆工コンクリートの品質を保つために重要な業務とされている。
しかしながら、狭いセントルの窓から打設数量を詳細に把握するためには、現場職員の手間と時間を要していた。一方、生コンプラントへのコンクリート発注や打設状況の伝達は、現場職員が電話連絡で行っている。そのため、トラブルによる打設の中断があった場合に、対応が遅れてしまうと生コン車の運行管理に支障をきたし、コンクリートの品質にも多大な影響を与えることもあった。
そこで、前田建設工業は覆工伝言板を開発した。覆工伝言板は、コンクリートポンプ車のピストン回数から打設した数量を算出して、0.1立方メートル単位でデジタル表示する。
さらに、打ち上がり状況の見える化は従来のセンサーでなく、充填率(x)と打設高さ(y)の回帰式により作図し、表示する高さの間隔は自由に選べる他、打ち上がり高さと打設時間から打設速度を弾き出し、側圧の管理値を超過すると注意喚起が表示される。
また、型枠天端の水平線(以下、水平線A)から上は、3Dレーザースキャナーで事前に計測する。この数量に自社標準工法「覆工マルチII※1」で打設した打ち上がり高さと水平線Aとの空間の数量を追加し、天端の打設数量を弾き出す。この空間の数量をセントル肩部に設置した圧力計のデータから今回開発した自動計算機で算定する。
※1 覆工マルチII:コンクリートの打設から締固め・養生までの一連の作業をシステム化し、様々な開発技術を組み合わせることで覆工コンクリートの施工品質向上を図る工法。1層ごと(50センチ)に4箇所の打設口を前後左右交互に切り替えながら、天端最頂部まで水平にコンクリートを打設し、ラップ側天端の打設口から最小数量で打設する。
加えて、コンクリートポンプ車に設置したエリアセンサーで荷下しをするミキサー車を自動検知することで台数を管理し、1台ごとにピストンカウントの誤差が修正され、より正確な打設量管理が可能になる。
覆工伝言板のメリットは、打設状況をモニターで見える化し、オンラインで配信することで施工担当者が離れた場所からでも進捗や打設状況を確認できるため、業務の効率化に貢献するだけでなく、打設状況を現場内や生コンプラントとオンラインで共有し、適正な時間間隔で生コン車を配車するため、コンクリートの品質不良を防げる点。
ピストンカウントに関しては、1カウント当たり0.02立方メートルでデジタル化することで、打設完了までに必要なコンクリート数量と打設中ならびに注文したミキサー車の残コンクリート数量を正確に調べられるため、残コンクリートをゼロとし、環境負荷の低減に役立つ。
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