パナソニック初のZEB化「久辺の里」を沖縄で現地取材、本土復帰50周年ライトアップも:ZEB(2/3 ページ)
シンクタンクの矢野経済研究所によると、今後もさらにZEBの注目度は高まっていくと予測しており、市場規模は2030年に7000億円を突破するとみている。ZEBの市場にいち早く参入すべく、パナソニック エレクトリックワークス社はZEBに関する専門知識を特化させた組織「ZEB推進チーム」を設立。建築主などの依頼に基づき、建物の設計から、施工、コンサルティングまでを一貫してサポートしている。
パナソニック製の設備で快適性と省エネ性を両立した「久辺の里」
建物のZEB化に伴うサービスを一挙に引き受けているパナソニック エレクトリックワークス社。その受注案件の第1号となったのが、沖縄県名護市にある特別養護高齢者施設「久辺の里」だ。
久辺の里は、大手ビルメンテナンス企業のビケンテクノが、新事業として立ち上げた社会福祉事業で運営する老人介護支援センター。2021年6月7日にオープンしたばかりのきれいな外観で、海を望む高い丘の上に立地しているため、晴天時には青い空と砂浜に囲まれた絶景が楽しめる。高齢者が入居する特別養護ホームは29床、短期入所用のショートステイは20床をそれぞれ用意し、デイサービスでは30人規模のケアプランセンターも併設している。
「施設内の証明や空調は全てパナソニック製品を採用し、暮らしやすさと省エネ性能を両立した」と小西氏。屋上に計48枚のソーラーパネルと高効率の変圧器を設置することで、電力の一部を補っている。それだけでなく、蓄電池やディーゼル発電機能も完備しており、災害時でも最低24時間は稼働するエネルギーを常に確保している。
また、壁や天井には最新の断熱材が入り、窓は遮熱性と紫外線カットを両立する「Low-E複層ガラス」を使用。入浴用の水を切らさない高齢者施設の特性上、最低限の効率で湯を沸かすエコキュートこそ導入できなかったものの、代わりに高効率なガス給湯器を配置し、より省エネ性能を高めている。こうした再生エネルギー利用(創エネ)と省エネ設備によって、年間の一次エネルギー消費量は50%以上の削減を達成。「ZEB Ready」の認定基準を満たした。
一方で、最新式の空気清浄機を備え、天井部には内気と外気の温度差を自動調節して冷暖房の効率を劇的にアップさせる熱交換器も多数取り付けている。さらに、独自のエネルギーマネジメントシステム(EMS)で、電力使用量を見える化。施設全体の空調や照明をPC上で管理し、暮らしやすい住環境を維持するのに役立つ。
しかし、これだけの最新設備をそろえるともなれば、従来の建築物と比べて、大きなコストアップは避けられないのではないかとの疑問が湧く。小西氏は、「ZEB化によるコストアップは、中小規模のオフィスビルでは約10%ほど。ただ、光熱費などのランニングコストが下がるため、総収支はすぐに取り返せる」と払拭。
ZEB化事業については、「既に福祉施設や中小企業など、少なくない企業から引き合いが来ている。久辺の里を先例に、引き続き建物のZEB化を提案し、受注案件を増やしていければ」と小西氏は抱負を語る。特にZEB化によってサステナビリティ性を謳(うた)い、自社のブランディングとしたい企業からの相談が増加しているようだ。パナソニック エレクトリックワークス社では2022年度の目標として、ZEB化受注案件40件、売上20億円に設定。2030年度には、年間280件で売上220億円を目標に見据える。
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