ドローンセキュリティガイドを公開した「セキュアドローン協議会」に聞く(後編)―建設ドローン産業の可能性を広げる“DaaS”:ドローンがもたらす建設業界の“ゲームチェンジ”(2/3 ページ)
ドローンは、歴史的には軍事の世界で飛躍的な発展を遂げてきた。それと同時にカウンタードローン/アンチドローンと呼ばれる敵対的なドローンを検出したり、通信をジャミングしたりなど、ドローンを阻害する技術も進化している。そのため、民間企業でもドローン運用時に、悪意あるリスクをどう防ぐかがこの先のフェーズでは問われてくる。
ドローンのセキュリティはサイバー/フィジカルの両面で
PCやスマートフォンでのノウハウの蓄積があるので、データ自体のセキュリティは、さほど難しくないと春原氏は説明し、ドローンでは「認証」こそがカギだと続ける。
「LTEが搭載され、クラウドとドローンが直接やりとりするとき、互いに送信するコマンドをどのように認証するかが問題となる。トークンベースの認証を経て、コマンドを受け付けるといったコマンドが本当に正しい人から送られたものかを担保する仕組みが求められる。また、ドローン操縦にはプロポを使うが、操縦者から物理的に操縦機器を奪ったら誰でも自由に操作できてしまう。今後は、生体認証付きプロポや操縦機器を手元から失ったときに無効化する機能などの開発も検討する余地がある」(春原氏)。
機体というリアルな物体が存在するドローンのセキュリティを考えるうえでは、サイバーだけに限らず、フィジカルセキュリティも見過ごせない要素だ。
ドローンビジネスの可能性を広げる“DaaS”
今後、日本のドローン利用が広がり、一大産業に成長していくためには、セキュリティ対策だけにとどまらず、より多くの企業が参入しやすくなるための環境整備は外せない。2022年6月には、その一環で「ドローン オープンプラットフォーム プロジェクト」がスタート。
春原氏が会長を務めるドローンコンサルティング会社のドローン・ジャパンと、国産ドローンメーカーのイームズロボティクスが中心となって立ち上げたドローン関連企業の技術連携が可能なプラットフォームを構築するプロジェクトで、セキュアドローン協議会もアドバイズパートナーで参加している。
オープンプラットフォームの理由を春原氏は、「ドローンには、機体、カメラ、ジンバル、バッテリーといったハードウェアに加え、アプリケーションやクラウドなどのソフトウェアも含む、多様なな産業が関わっている。仮に単一企業で垂直統合できれば、機体や各種サービスなど全てを網羅した多機能かつ安全性の高いドローンのトータルソリューションを効率的に開発できるが、実現可能なのは世界中で中国のDJIだけ。その代わりに米国が選択した戦略がドローンプラットフォームのオープンソース化で、結果、社会実装を大幅に加速させた」と説く。
ただ、日本は過去の例をみても、行政主導ではうまくいかないので、民間で日本版オープンプラットフォームを立ち上げ、水平分業型の体制を整えるというのがプロジェクトの狙いだという。プロジェクト内では、ドローン産業をいくつかの技術ブロックに分類し、技術ブロック間の連携やデータ交換のルール標準化、ドローンソリューション/ドローン技術の整理、人材育成、共通したサポート体制などを構築する。
「(自動発着陸や充電の基地となる)ドローンポートにしても、A社とB社で互換性がなければ使い物にならない。そのため、ドローンポートの仕様をあらかじめ、業界内で標準化しておく必要がある。逆に言うと、プラットフォームとして基準が一元化され、技術連携が可能で、誰もがドローン産業に参入しやすい環境が整っていれば、ドローンのテクノロジーは急速な発展を遂げるはず。そのプラットフォームこそがまさに、ドローンで取得したデータをいかに有効活用するか、そのサービス体系となる“DaaS(Drone as a Service)”であり、ドローンの潜在的な可能性をより広げることになる」(春原氏)。
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