大阪市北区ビル火災を踏まえた防火や避難対策に関する検討会報告書:法令動向
総務省消防庁と国土交通省では、「大阪市北区ビル火災を踏まえた今後の防火・避難対策等に関する検討会」で、階段が1つしか設けられていないビルにおける今後取り組むべき防火・避難対策などについて検討し、報告書を公表した。
2021年12月17日に大阪市北区において多数の死傷者を伴うビル火災が発生した。総務省消防庁と国土交通省では、「大阪市北区ビル火災を踏まえた今後の防火・避難対策等に関する検討会」で、階段が1つしか設けられていないビルにおける今後取り組むべき防火・避難対策などについて検討し、報告書を公表した。
同報告書によれば、火災シミュレーションによる避難可能性の検証の結果、火災発生時には、速やかに火災発生場所と避難場所を閉鎖の確実性に配慮された扉で区画することが効果的であったという。
対象となったビル火災は、大量のガソリンへの着火や在館者の避難を困難にする方法で放火しており、現行法令が想定する「一般的な火災」ではなく「特殊な火災」にあたるとし、特殊な火災の対策は社会への負担をかんがみて、規制的な手法ではなく誘導的な対策を基本とすべきとした。
また、直通階段が1つの建築物は、構造上のリスクを平時から下げることが必要であるとした。
具体的な対策としては、「直通階段から離れた位置の居室などの退避区画化が有効である」とし、「避難行動のガイドラインを示すべき」とした。また「既存不適格建築物に関する制限の合理化措置により、増改築等時の遡及適用の際の負担を軽減しつつ、現行基準に準じた性能向上を促進することが有効である」という。さらに「重点的に立入検査を実施し、消防法令違反については厳格な措置を徹底する」「建築基準法に基づく定期調査報告制度の指定可能対象範囲を拡大し、継続的に建築基準法令違反の是正指導などに取り組む」ことも挙げた。
その他、研究開発では、ガソリンなどによる火災の被害軽減に資する製品の技術開発を促進する、危険物の取り扱いについては、引き続き顧客の本人確認などの適正な運用を徹底するべきとしている。
今後、両省庁では検討結果を踏まえ、直通階段が1つの建築物向けの火災安全改修や避難行動のガイドラインの策定、消防法令違反および建築基準法令違反の是正強化などの対策をしていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 出火場所に応じて進入禁止を表示する避難口誘導灯を開発、竹中工務店
竹中工務店は、東芝ライテックやホーチキとともに、火災の発生場所に応じて危険な経路に人が進入しないような表示を行う「避難口誘導灯」を共同開発した。今後は、大規模商業施設や展示場のような不特定多数が利用する施設、大規模倉庫など、避難経路が複雑な施設への適用拡大を目指す。 - 長谷工とニチハが複合乾式外装工法を開発、耐久性とデザイン性を備えた外装仕上げ
長谷工コーポレーションは、ニチハとともに、RC造建築物向けの複合乾式外装工法「RC×EX工法」を共同開発した。今後、長谷工コーポレーションは、設計・施工する新築分譲マンションの事業主にRC×EX工法を提案していく。さらに、グループ会社が行う大規模修繕工事などでも、RC×EX工法を応用し新たなリニューアル工法として開発し訴求する見込みだ。 - ニッタンとテクサー、ビル統合管理システムと防災設備とのデータ連携検証
ニッタンとテクサーは、東京建物が管理する「東京建物日本橋ビル」にて、ビル統合管理システム「Dynamic Building Matrix」と防災設備とのデータ連携の検証を行っている。 - 能美防災、火災VR体験コンテンツのレンタルを開始
能美防災は、同社の法人向けVRコンテンツ「火災臨場体験VR 〜混乱のオフィス〜」のレンタルを開始した。価格は、1週間当たり1セット28万円に設定している。