NTTアーバンソリューションズが「ISO 37106」国内初取得、「東桜街区」スマートシティー実現までの“プロセス”評価:スマートシティー(3/3 ページ)
ICTを活用したスマートな街づくりを実現させるため、2019年に設立されたNTTアーバンソリューションズは、スマートシティーの戦略策定と管理運用のプロセスを評価する国際規格「ISO 37106」を国内で初めて取得した。
国際基準でスマートシティー運営モデルが証明される利点
NTTアーバンソリューションズではISO取得までの経緯について、「スマートシティーのISO規格が複数存在するなか、市民中心の持続可能なスマートシティー運営モデルについて認証する規格のISO 37106に着目したのがきっかけ。今後のNTTアーバンソリューションズでのスマートシティー開発に生かすべく、取得を目指すこととした」と話す。その後、世界最古の認証機関として、BSやPASなどISOの原案となる規格の策定実績があり、ISO 37106の唯一の認証機関である英国BSIへ申請した。
審査段階では、「日本第一号ということもあり、規格に対しての解釈が難しく、今回の対象街区の開発/運用プロセスに当てはめたとき、何がどのレベルまで求められているかを理解することに苦労した。自治体ではなく、街区での認証だっため、民間主導の案件に合わせた要求事項の読み替えが必要だった。項目の相関性を見つつ、解釈をしていくことで、要求されていることが徐々に理解できるようになった」とコメント。
ISO 37106の意義については、実利面と新たな価値創出の両面でメリットを期待。具体的には実利面で、SDGsへの対応と国際基準以上でスマートシティー運営モデルの達成が証明されることで、感度の高いテナントへの誘致効果をはじめ、国際基準が求められる他のプロジェクトへの展開、不動産価値そのものの向上につながる。
一方、コンポーネントの(A)提供原則にある“人間中心”“デジタル活用”“オープンで協調性”の実現で、Well-Beingや住民サービスの品質向上、デジタル活用で低コストのサービス提供、組織内の横断的連携や人材育成でガバナンス強化、街づくりに関わるステークホルダーの早期合意形成、オープンデータによるテナントを含むオープンイノベーションの促進などでもプラスに働く。
さらに、取得者がデベロッパーなどの民間企業だけでなく、今後は韓国の先例のように自治体も想定されるため、双方で異なる取得メリットももたらされる。自治体であれば、国際基準のスマートシティー運営モデルが証明されることになるため、都市への投資や産業育成の促進、インフラそのものの輸出力強化、国のスマートシティー/スーパーシティーのプロジェクトに採択される可能性も高まる。事実、世界で初めて取得した世宗市では、国際的に認証された“韓国版スマートシティー”のモデルをパッケージ化して、海外輸出していくことを標ぼうしているという。
新たな価値創出の面でも、自治体では、住民サービスの品質向上、自治体内の横断的連携、オープンデータ連携でCivic Techなどの協創活動の活性化といったことも予想される。
ISO取得後の展開として、NTTアーバンソリューションズでは、「認証を受けた東桜街区をスマートシティーの先行モデル街区とし、今後予定している街づくりにも応用し、デジタルで支えられたヒト中心で成長し続ける街づくりを推進する」。
また、2020年6月にスタートした産官学のスマートシティー共創の場「Sustainable Smartcity Partner Program(SSPP)」では、地域・住民(生活者、自治体、企業、NPO、教育機関など)を主役とした街づくりを掲げ、実事例の創出と周辺エリアや他エリアへの横のつながりを広げ、“地域・住民の幸せ(Well-Being)の最大化”の実現に向けて持続的に取り組んでいる。ISO 37106と方針が合致するため、Webポータルサイトの運営や意見交換会、ビジネス共創など、多数ある活動の1つとして、今回のノウハウをもとに、ISO認証取得のコンサルティングサポートも行っていく。
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