大成建設らがシールドマシンのカッタービット交換ロボを開発、交換時間を4割短縮:山岳トンネル工事
大成建設は、地中空間開発と共同で、遠隔操作により迅速で安全にシールドマシンのカッタービットを交換するロボットを開発した。今回のロボットは、適用することで、従来の「THESEUS工法」よりもビット交換時間を4割短縮し、人力での交換作業も無くなることから、安全性も高まる。
大成建設は、地中空間開発とともに、シールドマシンの機械式ビット交換工法「THESEUS工法※1」に改良を施し、マシン内部の可動式マンホールを介して遠隔操作で迅速かつ安全にカッタービットを交換するロボットを開発したことを2022年3月24日に発表した。
※1 THESEUS工法:シールドマシンの口径に関係なく、マシン内部から可能式マンホールとスライド式交換装置を用いて、人力によるビット交換を可能とする機械式ビット交換工法。ビット交換用の立坑を新たに構築する必要がなくなるため、周辺環境への影響を軽減した施工を実現し、ま何度でも効率よく安全にビット交換が行える。
約10分でのビット交換に対応
2021年に開発したTHESEUS工法は、シールドマシンの口径に関わらず、カッターヘッドに装着された先行ビットをマシン内部から何度でも交換できる工法。しかし、可動式マンホールの取り付け位置やマシン口径の大きさ、ビット配置などによっては、交換者が無理な体勢での作業を強いられ、手が届きにくい位置にあるビット交換に労力と時間を要していた。
さらに、大口径マシンを利用する際には、重く持ち運び困難な大型ビットを扱うため、交換時の作業効率低下や手指の挟まれなどで安全性にも課題があった。
そこで、大成建設と地中空間開発は、カッタースポーク内にあらかじめ設置されたレール上を自走するロボットを開発し、遠隔操作によりビットを効率良く安全に交換するように改良を施して、実大のモデルを用いた実証実験を行い、ビット交換手順とその効果を確認した。
開発したロボットによるビット交換の手順は、まず、遠隔操作によりビット交換ロボットが交換対象となる旧ビット位置まで移動し、シールドマシンのビットをスポーク内部に引き込んで取り外し、ロボット本体内に回収する。
ビットの回収後、遠隔操作により、ロボットが可動式マンホール位置まで移動した後、手動で可動式マンホールまで移動したロボットからビットをシールドマシン内部に回収。なお、新たなビットを取り付ける場合は前記と逆の手順で行う。
今回のビット交換ロボットは、コンパクトな形状のため、交換作業時に可動式マンホールを介してスポーク内に設けられ、スポーク内に事前に敷設された走行用レール上を自走して、容易にビット交換に応じる。
加えて、ロボットに搭載された2台のカメラでスポーク内の作動状況を確認しながら、可動式マンホールを介してシールドマシン内部から有線での遠隔操作を行える。また、狭いスポーク内でロボットを用いたビット交換作業を遠隔操作により行えるため、作業効率と安全性が向上する他、従来のTHESEUS工法と比べ交換時間を4割削減し、約10分でのビット交換に対応する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ロックボルトを2本継ぎ足し6mで打設可能な新装置、大成建設
大成建設らは、3メートルロックボルト2本を機械的に継ぎ足して、6メートルロックボルトとして打設する装置を開発した。新装置は、遠隔打設装置「ロックボルタ」に装着して、地山の状態が悪い現場で、ベンチカット工法により断面を小さく分割して掘削を行っても、切羽断面内に収まるため、これまでと比較して施工時の省人化や安全性向上を実現する。 - 掘削面を“スクリーン”に見立て地盤情報を投影する装置を開発、大成建設
大成建設は、山岳トンネル工事で掘削面をスクリーンに見立て、そこに地盤情報を投影する「切羽プロジェクションマッピング」を開発した。 - 山岳トンネル工事に特化したCIM、大成建設が実践導入
大成建設は施工情報、現場情報、書類情報などを一元管理・共有できる山岳トンネル工事向けのCIM「T-CIM/Tunnel」を開発し、実際の山岳トンネル工事現場への導入を開始した。3D CADより簡易に3Dモデルを作成できる独自のツールを導入し、切羽観察シートの作成を作業現場で完了できるなど、山岳トンネル工事における大幅な現場作業の効率化に貢献するとしている。 - 山岳トンネル工事で切羽のコンクリート吹付を遠隔操作
大成建設は、山岳トンネル工事で、切羽(掘削面)のコンクリート吹付を遠隔化する「T-iROBO Remote Shotcreting」を開発した。