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「甲子園」伝統の“カクテル光線”を再現、パナソニックが照明設備756基をLED化LED(1/3 ページ)

阪神タイガースのホームグラウンドで高校野球の聖地でもある阪神甲子園球場で、2024年の創設100周年に合わせて、スタジアム照明が全面LED化された。LED照明器具の開発を含め照明リニューアルをトータルでサポートしたパナソニック エレクトリックワークス社は、甲子園独特の照明色を継承することに力を注いだという。

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 阪神甲子園球場とパナソニック エレクトリックワークス社は2022年3月9日、阪神甲子園球場LED照明演出のお披露目会を開催した。

 阪神甲子園球場(以下、甲子園)は、1924年に開場した日本初の大規模多目的野球場。ナイター照明は1956年の設置以降、明るさや演色性の改善を目的に、複数回の改修がなされている。今回のLED化は、2024年の甲子園100周年に向け、環境保全や新たなエンターテインメント性の提供という昨今の社会的要求を、甲子園が掲げる“歴史と伝統の継承”のテーマに沿って実現した試みとなる。

※演色性:物体に照明を当てる際、自然光の色をどの程度再現しているかを示す尺度

甲子園特有の“カクテル光線”


2024年に創設100周年を迎える「阪神甲子園球場」

 1956年に甲子園で初めて採用されたナイター照明は、橙(だいだい)色がかった白熱灯が中心の構成だったが、小さなボールを追う野球場の照明としては明るさが不十分だった。その後、甲子園球場のナイター設備は、白熱灯よりも明るい水銀灯を追加し、複数の光源を組み合わせた仕様へと強化された。

 従来の白熱灯による橙色の光と水銀灯が発する青白い光の組み合わせは、独特の色味と雰囲気を生み出し、“カクテル光線”と呼ばれるようになり、甲子園のナイター照明が他球場とは異なる特徴になっている。

 今回の照明リニューアルでは、甲子園特有の個性でもあるカクテル光線を継承しつつ、さらにエンターテインメント性の提案や環境への配慮といった新たな価値を付与することも目的にある。


阪神電気鉄道 スポーツ・エンターテインメント事業本部 甲子園事業部 赤楚勝司氏

 会見に臨んだ阪神電気鉄道 スポーツ・エンターテインメント事業本部 甲子園事業部 赤楚勝司氏は、「次の100年にも、皆に愛される野球場であり続けられるように率先して社会貢献を果たしていきたい」と、ナイター照明リニューアルの意図を語った。

 また、「2022の新たなシーズンからは、LED照明と音響、ビジョン映像を連動させることで、屋外球場の特色を生かし、高さのあるナイター照明も活用しながら、甲子園だからこそできるオンリーワンの演出やエンターテインメントを繰り広げていく」と抱負を述べた。

 エンターテインメント面では、瞬時に点灯/消灯の切り替えをはじめ、個別に光源をコントロールが可能なLEDの特性を生かし、試合の流れに応じたダイナミックな演出が可能となる。とくにコロナ禍でのスポーツ観戦では、飛沫感染を防ぐために、入場制限もさることながら、大声での応援やジェット風船による演出ができなくなった。そのため、LED照明と音響、ビジョン映像などと連携した多彩な演出手法で試合を盛り上げることも見据える。

 一方の環境配慮では、LED照明へ切り替えることで、ナイター照明の電力を抑えられ、CO2排出量の約6割削減が見込めるという。


ナイター照明のLED化で、照明塔6基が全て建て替えられた

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