“100年に一度の街づくり”を進める「中野駅前再開発」の概況:プロジェクト(5/5 ページ)
本稿では、東京の賑わいを担う街として、“100年に一度”の街づくりでさらに発展が見込まれる「中野」駅周辺地域の再開発計画について、複数資料からこれまでの経緯と今後の見通しを紹介する。
中野サンプラザ建て替えは野村不動産らが
そして、いよいよ中野エリアの市街地再開発で目玉となる、「中野サンプラザ」の建て替えを含む拠点施設の整備事業が2021年5月に始動した。
野村不動産を代表とするグループが中野区と基本協定書を締結し、共同事業者には東急不動産、住友商事、ヒューリック、JR東日本が参画。大ホールやオフィス、住宅、商業施設、ホテルで構成する大規模複合施設を建設する。2022年度末には都市計画が決定し、2028年度内の竣工を目指すこととなる。事業の正式名称は「中野駅新北口エリア拠点施設整備事業」。
計画地は、現在の中野サンプラザと区役所が入る一帯で、施工予定区域面積は約2万3457平方メートル。事業内容には、既存施設の解体作業と機能移転を含む。
建物は、現段階で3棟の予定で、駅寄りには最も高層のシンボルタワーとし、低層部に商業施設と中層部にレジデンス、最上階にはオフィスが入る。その他は、ホテル棟と北側の大ホール棟で構成する。
提案概要書によると、文化施設「中野サンプラザ」の機能を拡大・再整備させることが主眼に置かれ、さらにはグローバルな都市活動拠点の形成や地域経済の活性化について、立地特性を生かして取り組んでいく。
集客機能の要となるホールについては、現在、中野サンプラザのキャパシティーが1〜2階合計で約2000人に対し、新たな大ホールでは最大7000人を収容する。
また、大ホール棟の屋上や地上階部分には、広場スペースおよび歩行者空間を設け、人の流れを創出。なかでも、2階レベルには中野駅の南北自由通路から周辺地区へとつながるスカイデッキを設置し、周辺へ賑わいを波及させる。3棟にエリアマネジメント施設や中野通り沿いにもストリートギャラリーを設けることで、エリア独自の文化活動も支援する。
建物の基壇部は、周辺の街並みに合わせたスケールに分節して調和を図る。高層部は中野の象徴である現中野サンプラザの三角形を生かしたトップデザインとし、依然としてランドマーク性を備えた新たなシンボルタワーとする考え。
中野サンプラザの建て替えを含む市街地再開発事業は、土地区画整理事業との一体施工による整備を想定している。このうち、「中野四丁目新北口駅前土地区画整理事業」は、2019年3月に都市計画決定済みで、現在は、都市再生機構が約5.1haの事業認可に向けた手続きを行っている。中野駅北口駅前では、広場整備を実施する街路事業も進行しており、市街地再開発事業はこれらと連携しながら着手する計画だ。
どうなる中野2丁目/5丁目の街づくり
これまでの再開発計画は中野駅周辺と、その北西側の地域である中野4丁目が主役だった。しかし、開発の波は、他の周辺地域にも及ぼうとしている。
中野区は2022年2月14日、「中野二丁目地区・中野五丁目地区まちづくり検討支援業務」の受託事業者の公募を開始。GD3の想定範囲である中野2丁目(南東)と5丁目(北東)の東側の2つの街が検討の対象となる。
中野2丁目エリアでは現在、地区計画上で「A地区」と定めている範囲について、前述の“高層ツインタワー”を建設する「中野二丁目地区第一種市街地再開発事業」が、周辺の土地区画整理事業とともに一体で施行されている。今回の街づくり検討支援業務は、A地区以外に中野駅南口から直線で南に伸びる「ファミリーロード」を中心とした「B地区」と、同じ沿道で隣接する「C地区」の地区整備計画の都市決定に向け、地域住民や関係機関との協議を進める予定だ。
さらに、中野2丁目エリアでは中野駅南口から鉄道沿線の「千光前通り」についても、地区の将来像や都市再生の方向性をまとめる考え。同地域では2020年1月に有志による任意組織「千光前通り周辺まちづくりを考える会」が発足しているため、連携して街づくりの課題や具体像を合意形成を図からなくてはならないことが背景にはある。
支援業務ではまた、中野駅5丁目の街づくり基本方針を策定。2021年度に策定した基本方針の素案を踏まえ、地元意見を聴取してエリア全体の在り方を整理する。この地区は、中駅新北口エリア(前述)と歩行者デッキで接続する方針で、区はこうした整備事業も見据えたプランを求めている。
支援業務の企画提案は2022年3月14日まで受け付け、受託希望者のヒアリングを実施した後、同年4月上旬にも事業者を決定する。業務の期間は、2023年3月17日まで。とくに中野5丁目地区は「中野ブロードウェイ」や「中野サンモール商店街」など、一帯を象徴する物件も多いため、とりまとめの方向性が注目される。
拡大する“中野らしさ”はどこまで広がるか
「100年に一度」の再開発を進める中野駅周辺。本稿では、現在進行中のプロジェクトを振り返ってきたが、各案件はそれぞれ特色を見せつつも、オフィス、住居、飲食店に文化施設を混交した賑わいのある“中野らしい”街づくりビジョンは、変わらず踏襲されている。さらに、現在のまちづくりを推進しているGD3の計画期間はまだ半分を折り返したにすぎず、対象範囲も広大だ。計画の残る期間に、他の周辺エリアへにも開発が波及していくことで、魅力的な“中野らしさ”はどこまで大きくなり、東京に新たな活力源を生み出していくのだろうか。中野エリア一帯の都市再生からは、まだ目を離すことはできないだろう。
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