現場稼働状況をリアルタイムに3Dモデルに反映するシステムを開発、大林組:BIM
大林組は、デジタル空間上でBIMの3Dモデルに周囲の地形やクレーンの位置、就労人員などの稼働状況をリアルタイムに反映する「4D施工管理支援システム」を開発した。4D施工管理支援システムは、人の移動情報やIoT化されたモノの情報を取得することで、容易にデジタル空間に再現できる汎用性を備えている。今後は、実証実験を通じて現場ごとに必要な情報を管理し、使えるプラットフォームとして構築して、運用することで、建設業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を実現していく。
大林組は、デジタル空間上でBIMの3Dモデルに周囲の地形やクレーンの位置、就労人員などの稼働状況をリアルタイムに反映する「4D施工管理支援システム」を開発したことを2022年2月25日に発表した。
入退場システムと連携させることも可能
建設業で生産性向上と働き方改革を実現するには、ICTを活用した施工や生産プロセスの変革が重要とされている。そこで、大林組は、デジタル空間上に現実世界の人やモノといった現場の状況をリアルタイムに反映させたデジタルツイン※1を作成し、施工管理に活用する4D施工管理支援システムを開発した。
※1 デジタルツイン:実空間で収集したデータを基に、デジタル空間上に実空間のモノを再現する技術
4D施工管理支援システムは、これまで現地で確認していた現場の稼働状況を一元的に「見える化」することで、施工管理に必要な情報の収集にかかる手間を削減するとともに、現地に行かなくても遠隔地からの状況確認を可能とする。さらに、デジタル空間からのフィードバックに関して、収集した情報は、解析することで出来高の算定や施工計画のシミュレーションなどに使える。
具体的には、BIMの3Dモデルを基にした建築物の施工状況に、ドローンによって得られた点群データを重ね合わせることで現場の起伏などを再現する。そのデジタル空間をプラットフォームとし、IoT化した重機の位置や稼働状況、監視カメラの映像、作業員の出面情報など、現場管理に必要なデータを連携させることで、リアルタイムに現場の状況を反映させられる。
こういった情報をデジタル空間上で一元的に管理することで、従来現場にいかなければ分からなかった情報を遠隔から確かめられ、施工管理の効率がアップする。
既に、大林組は、北海道北広島市で施工中の「エスコンフィールドHOKKAIDO新築工事」で4D施工管理支援システムの実証実験を行っている。実証実験では、クレーンに無線情報収集システムを搭載することで、GNSSによる位置と方位だけでなく、各種センサー機器を通じてブームや旋回の角度、鉄骨の吊(つ)り荷重、キャビン内のモニター監視による揚重状況など、クレーン稼働状況のデータをリアルタイムに取得。
得られた情報は、遠隔地からの一元管理だけでなく、吊り荷重と位置をBIMデータ上の設計重量や位置と突き合わせることで、鉄骨部材がいつ取り付けられたかを推測し出来高を算出するなど、管理業務の支援に活用している。
また、入退場システムと連携させることで、作業班ごとにリアルタイムで何人が作業に携わっているかを可視化する他、作業班ごとの業務効率をデータ化し労務調整や作業工程の見直しに反映させられる。
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