運転席でリアルタイムにトンネル周辺地山の性状を確認可能な新システム、西松建設:山岳トンネル工事
西松建設は、ドリルジャンボの切羽前方探査システム「DRISS」向けに、地山評価の作業を自動化し、施工重機の運転席でリアルタイムにトンネル周辺地山の性状を確かめられる「DRISS-3D_Monitor」をジオマシンエンジニアリングとともに開発した。DRISS-3D_Monitorは、作業員の“感覚知”や“経験知”であった詳細な地山性状を、穿孔したその場で3次元的に“見える化”することによって、現場、関連部署、客先などにスムーズな情報共有を実現し、施工への迅速な反映が可能となっている。
西松建設は、山岳トンネル施工における地山評価を高精度で行うための仕組みであるドリルジャンボの切羽前方探査システム「DRISS※1」向けに、地山評価の作業を自動化し、施工重機の運転席でリアルタイムにトンネル周辺地山の性状を確かめられる「DRISS-3D_Monitor」をジオマシンエンジニアリングと共同で開発したことを2022年1月31日に発表した。
※1 DRISS:Drilling Survey Systemの略称で切羽前方探査(長さ30メートル程度)のデータを解析するためのシステム
評価値の分布計算も自動で対応
掘り進めながら適切な支保パターンや補助工法の要否を判断していく山岳トンネルの施工では、迅速かつ詳細な地山性状の評価が重要となる。そのため、西松建設では、施工中の穿孔データからトンネル周辺の地山性状を定量的かつ3次元的に評する「DRISS-3D※2」を地山評価に活用していた。
しかし、DRISS-3Dでは事務所PCによるデータ処理を要するため穿孔した場では結果を見られないという問題があった。
※2 DRISS-3D:山岳トンネルの掘削に使用されるドリルジャンボの施工データ(装薬・発破・孔・ロックボルト孔の削孔データ)を使用して、切羽およびその近傍の地山性状を定量的かつ詳細に3次元評価可能な地山評価システム
そこで、西松建設はジオマシンエンジニアリングとともにDRISS-3D_Monitorを開発した。DRISS-3D_Monitorは、装薬孔やロックボルト孔などを穿孔した場でデータが自動処理されるため、地山評価の結果をリアルタイムに可視化する。
さらに、削岩機の油圧、穿孔の速度、角度、施工断面の位置といったデータが、施工重機(ドリルジャンボ)に設置した「制御ボックス」に自動で取得される。加えて、運転席の「地山性状表示モニター」で岩盤強度や穿孔エネルギーをはじめとした評価値の分布計算が自動で行われ、10秒間隔で結果が更新されていく。
「地山性状表示モニター」画面の分布図の見方、DRISS-3D_Monitorの図(左)とトンネルの模式図、DRISS-3D_Monitorの図では中央の馬蹄形は切羽面、左右と下の長方形は各天端〜左脚部、天端〜右脚部、左脚部〜右脚部の展開図を示している 出典:西松建設プレスリリース
また、地山評価の結果をリアルタイムに得ることで、作業中の切羽における脆弱部などを詳細に把握可能なため、安全性が向上する他、地山評価の結果を早期に得ることで適切な支保パターンや補助工法の要否を迅速に判断しやすくなり、より合理的な施工を実現する。従来必要としていた解析人員も減らせるため生産性が高まる。
今後、西松建設では、DRISS-3D_Monitorの現場適用やブラッシュアップを行い、切羽周辺の施工データを有効活用していくとともに、切羽前方の探査データを対象とした「DRISS」についても自動での解析に対応するようにソフトウェアを改良する。
並行して、各施工重機の無人化技術を組み合わせた自動化・無人化施工技術「Tunnel RemOS※3(トンネルリモス)」の構築を推進し、トンネル掘削作業の完全無人化を達成することを目指す。
※3 Tunnel RemOS:山岳トンネルの施工に使用される各機械・設備の遠隔操作(無人化)技術・自動化技術を組み合わせて構築される無人化施工システム
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