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コンクリ施工の「配筋、締固め、検査」でも適用が進むAI【土木×AI第7回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(7)(2/2 ページ)

連載第7回は、インフラ構造物のコンクリート工事を対象に、活用の場が広がるAI活用について、最新研究の論文を複数引用して紹介します。

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専門技術者の経験に基づく“目視判定”をAIで再現

 コンクリート締固めの程度や完了の判断は、「コンクリートの容積減少が認められなくなり、表面に光沢が現れて全体が均一に溶け合ったように見える」など、技術者の経験に基づく“目視判定”で行われるのが一般的です。そのため、締固め完了の判断は、専門技術者でも時間的な個人差があります。

 文献3「AIによるコンクリートの締固め自動判定システム開発の試み」※3では、ビデオカメラで撮影した締固め時のコンクリート表面の画像を用いて、専門技術者の目視での判断に近い判定結果をAIで再現することが試みられています。下図では、締固め完了前を赤、締固め完了判定箇所を緑、継続して3秒以上の締固め完了判定となっている箇所を青で示しています。


AIによる締固め判定結果 出典:※3

※3 「AIによるコンクリートの締固め自動判定システム開発の試み」林俊斉,齋藤淳,小島弘道,長田茂美共著/AI・データサイエンス論文集2巻J2号p79〜86/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2021年

 構造物が出来上がった際には、形状が規定通りかどうかを検査する「出来形検査」が行われます。また、初期点検としてひび割れも測定します。こうした作業も、現在はメジャーを使って手作業で手間を掛けて行っているのが実態です。

 そこで、台車にカメラを取り付け、位置や形状を自動計測し、ひび割れをAIで検出して、出来形検査と初期点検を同時に行うロボットシステムが開発されています。下図は、橋の壁高欄の検査ですが、壁高欄の内側と外側を、台車のアームに取り付けたカメラで同時に計測することで、作業の効率化や安全性向上につながります※4


壁高欄測定ロボットによる検証状況(左)、AIによるひび割れ検出結果(右) 出典:※4

※4 「出来形計測ロボットを用いたコンクリート製剛性防護柵の施工管理の効率化」柿市拓巳,前田晃佑,山崎文敬,阿部翔太朗,高木寛之(はしご高),南園直弥共著/AI・データサイエンス論文集2巻J2号p741〜748/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2021年

 橋梁(きょうりょう)には、プレストレストコンクリートが用いられる場合も多いですが、プレストレス導入後にグラウトを注入する際に未充填(じゅうてん)があると、耐久性に悪影響が生じます。

 そのため、衝撃力を加えることで発生した弾性波の特徴を利用する「インパクトエコー法」が未充填箇所の検出法の1つとして用いられています。弾性波は、橋内部の鋼材などの表面からも発生するほか、部材の形状や大きさの影響を受けるため,PCグラウトの未充填部を評価するには,経験と熟練が求められます。そこで、文献5の「PCグラウト充填判定への深層学習の適用に関する検討」※5では、弾性波のスペクトル特性をコンター図として可視化した画像を用いて、深層学習を適用することで,未充填箇所の判定が試みられています。


未充填箇所の判定 出典:※5

※5 「PCグラウト充填判定への深層学習の適用に関する検討」田村誠一,嶌田壮志,中村秀明共著/AI・データサイエンス論文集2巻J2号p485〜494/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2021年

 このように、コンクリート施工時の配筋、締固め、検査などの主要な局面でAIの導入による生産性の向上が検討されていることが分かります。また、AIによって、従来は定性的な判断結果などの記録のみであったものが、電子的なデータとしても記録が残ることになります。デジタルデータの蓄積や整備が進むことで、供用開始後には維持管理の基礎的な情報となり、構造物のライフサイクル全体を視野に入れたDXにもつながることが期待されます。

著者Profile

阿部 雅人/Masato Abe

ベイシスコンサルティング 研究開発室 チーフリサーチャー。防災科学技術研究所 客員研究員。土木学会 構造工学委員会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会 副委員長、インフラメンテナンス国民会議 実行委員を務める。近著に、「構造物のモニタリング技術」(日本鋼構造協会編/コロナ社)がある。

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