「旧九段会館」の復元工事を披露、貴重な部材を残しつつ復元する手法とは?:プロジェクト(2/3 ページ)
1934年に東京都千代田区で竣工した九段会館が、東急不動産と鹿島建設により、現行法規に合わせた仕様のオフィスに生まれ変わる。
当時の職人技を再現するためにコテを特注
2階では、応接室、その廊下、役員室、宴会場「鳳凰」を公開した。応接室では、工事中に、奈良県奈良市の正倉院宝物殿にある銀壺(つぼ)と類似した模様のクロスを発見したため、保管しており、壁紙は、創建時の無垢フローリングと金箔を施したデザインを採用している。
応接室の廊下では、「刀剣」をモチーフにした鋳物を展示し、無垢の真鍮(しんちゅう)製蝶番を使用したスチール扉を復元中だ。また、役員室では、天井と壁を現代の漆喰風材料で施工している。応接室と役員室は、竣工後、貸会議室として生まれ変わり、寄木張りの床と絹織物の天井が歴史を醸し出す空間となる。
宴会場の鳳凰では、左官職人が、当時の職人技を再現すべく、特注したコテで、天井や梁型、壁面の唐草模様を再現している。
3階で披露された宴会場「真珠」では、真鍮製の下地にスズメッキを施した金属製の装飾が取り付けられた壁面の保存と復元を行っている。さらに、ガラス繊維強化セメント「GRC※1」を用いて、石膏(せっこう)製の天井を復元し、施工中に発見した木村武山氏の絵画も飾る予定。
※1 GRC:Glassfiber Reinforced Cementの略称で、セメントあるいはセメントモルタルを耐アルカリガラス繊維で補強した、ガラス繊維補強セメントで、引張強度と靱性に劣る無機質セメントを、引張強度に優れたガラス繊維で補った複合材料
なお、鳳凰と真珠の両部屋は、創建時の照明や装飾品を可能な限り再現し、登録有形文化財の歴史的価値を残して、完成後は、昭和初期のモダニズムを感じられる宴会場とカンファレンスルームとして活用する。
5階で紹介されたラウンジでは、床面に敷設された人口大理石の他に、隣接するテラスから望める屋根では、織部焼をイメージさせる屋根瓦を復元している。屋根瓦を製作するにあたり、織部焼特有のムラを出すために、古い窯(かま)を使用し、織部色を出すために釉薬(うわぐすり)の配合比率を変えつつ、40枚以上の試作品を作った後、製造した。
建物の開業後には、ラウンジは入居者専用とし、テラスに整備する屋上庭園は、仕事の合間にリラックスするスペースとする。
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