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鹿島建設が”首都直下地震”を想定したBCP訓練を実施産業動向

鹿島建設は、首都直下地震など大規模災害の発生時に通信環境や支店機能が失われたなかで、建設会社としてインフラ早期復旧や現場保全など、どうのようなBCP対応をすべきか、5つの観点から全社訓練を実施した。

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 鹿島建設は2021年8月26日、首都直下地震をはじめとする国内各地で起こり得る大規模地震を想定したBCP訓練を全社一斉に実施した。

約2万4000人を対象とした「従業員安否システム登録訓練」も実施

 BCP訓練では、同社本社と首都圏4支店(関東、東京土木、東京建築、横浜)で、午前9時に埼玉県さいたま市を震源とする最大震度6強の地震(マグニチュード7.5)が起き、周辺地域で甚大な被害が発生したと想定。

 さらに、停電と断水が生じ、公共交通機関も停止し、主要道路が車両通行規制となる状況を設定。建設会社として社会インフラの復旧や顧客対応を早期に開始すべく、被災した埼玉県さいたま市大宮区の関東支店を、東京都港区の東京土木支店や千代田区の東京建築支店、神奈川県横浜市中区の横浜支店が支援する災害対応の体制を確立した。


オンライン会議で各部署・支店の報告を受ける鹿島建設 代表取締役社長 天野裕正氏(左) 出典:鹿島建設プレスリリース

 訓練では、輸送方法やルート検討、人員、重機、物資の手配などを行った他、コロナ禍の感染防止のために現地集合できる人員が少なく、加えて日頃使っているオンライン会議ツールも使えなくなった場合に備え、代替手段で非常時の情報を共有した。

 具体的には、「社員の家族間における安否確認の強化」「通信環境が制限された状況下での震災対策本部の活動訓練」「“q-NAVIGATOR※1”を活用した対応訓練」「工事現場における初動対応」「新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言下における訓練」といった5つの訓練を行った。

※1 q-NAVIGATOR:建物内に設置した複数のセンサーが地震による揺れの強さを感知し、建物で生じた変形の大きさを推定することで建物の倒壊可能性を判定するシステム。判定結果は揺れが収まってから1〜3分で分かる

 社員の家族間における安否確認の強化では、社員各自が災害時に「家族との連絡手段」を3番目まで決めた上で、実際に連絡を取り合い、家族の職場や学校、自宅などから近い避難所を確認し、各家庭で共有した。また、社員や社外人材、国内グループ会社に所属する約2万4000人を対象に「従業員安否システム登録訓練」も行った。

 通信環境が制限された状況下での震災対策本部の活動訓練では、一般電話、携帯電話による音声通話が不可能となり、PCまたは携帯電話によるメールとWebへのアクセスは、通信速度が低下するといった障害が生じることを想定しつつ、訓練を実施した。通常時に業務で利用している「Teams」が使えない状況をイメージし、代替手段として「Zoom」を利用して各拠点や部署間での情報共有を試みた。

 q-NAVIGATORを活用した訓練では、震災時に建物の被災状況を即時に把握できる建物安全度判定支援システムの有効性を確認。q-NAVIGATORを既に導入済みの本社と各支店では、通常は発災直後にq-NAVIGATORの解析結果を確認し、拠点ビルの建物安全度を判定するが、今回の訓練では震源地に近いさいたま市大宮区の関東支店が入居するビルが多大な被害を受け、q-NAVIGATORにより「使用不可」の判定になったとし、茨城県に代替本部を立ち上げることに挑戦した。


「q-NAVIGATOR」による建物の安全性判定 出典:鹿島建設プレスリリース

 工事現場における初動対応では、作業員が現場で倒壊した足場の下敷きになるなど、起こりうる人的被害をイメージし、消防隊がすぐに来られないなかでの救出方法を検討した。そのうえで、独自の「震災時における現場対応指針」で定めた対応項目で現場を点検して、避難計画や協力会社との連携方法を確かめるなど、災害時の工事現場で初動時にとるべき行動を関係者間で共有した。

 さらに、被災現場への応援人員、重機、物資の手配、輸送方法、ルートの確認、緊急通行車両の申請に関する手続きと運用ルールを再確認して、災害時現場速報システムを活用した情報共有も行った。

 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言下における訓練では、感染症拡大防止の観点から、従業員がWebコンテンツを利用して自衛消防活動を非接触で学習し、初期消火班、通報連絡班、避難誘導班、応急救護班などに分かれてそれぞれの役割を確かめた。なお、例年は、同社の本社ビルで東京消防庁赤坂消防署の指導を受けて、自衛消防隊による消火訓練を実施している。

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