新型コロナの陰性証明やワクチン接種履歴を“指をかざすだけでヘルス認証”、鹿島らが共同実証:withコロナ
鹿島建設、日立製作所、H.U.グループホールディングス、九州大学、電通は、新型コロナウイルスの陰性証明やワクチン接種履歴を公開型生体認証技術PBIを用いて手ぶらで、オフィスビルや建設現場の入場ゲートで提示できる新たなデジタルヘルス証明の実現に向けた実証を開始した。既に、鹿島建設のオフィスビルで技術実証を行い、個人情報保護に配慮した利便性の高い認証技術として、技術面と運用面での有効性が確認されている。
鹿島建設、日立製作所、H.U.グループホールディングス、九州大学、電通は、新型コロナウイルス感染症の検査結果やワクチン接種履歴を紙やスマートデバイスを使わず、指静脈を活用した日立独自の公開型生体認証技術「PBI(Public Biometric Infrastructure)」を用いて、手ぶらで提示できる新たなデジタルヘルス証明の実現に向けて、共同実証を開始したと2021年10月21日に発表した。
既に2021年9月27日〜10月6日には鹿島が東京都港区に所有する「赤坂Kタワー」で、実証への協力に同意した同社の従業員を対象に、ワクチン接種履歴などの事前登録から検査の実施、デジタルヘルス証明発行、オフィス入館までの一連の技術検証を行った。今後は、オフィスなど建物内での実装に向けた準備を進めるとともに、鹿島の建設現場でも共同実証を行う予定。
オフィスビル以外の建設現場や学校、病院などにも適用範囲を拡大
共同実証の背景には、最近では日本国内でもワクチン接種や検査が普及し、同接種歴や陰性証明を活用した行動制限の緩和が模索されているなか、デジタルヘルス証明(ワクチン接種履歴及び陰性証明のデジタル表示)を活用した安心空間を実現する仕組みが求められていることがある。一方で、現在の新型コロナワクチン接種証明書は、ほとんどが紙媒体の発行で、証明書の偽造や他者へのなりすましなどのリスクも指摘されている。また、感染の有無を調べる検査でも、機器や手法などの違いから、検査精度にバラつきが生じることが課題となっている。
実証では、従業員は最初に、H.U.グループホールディングスの連結子会社医針盤が提供するスマートフォンやPCで健診結果や検査結果などをいつでも確認できるPHR(Personal Health Record)アプリ「ウィズウェルネス」をダウンロードして、検査予約やワクチン接種履歴を登録する。検査後の陰性証明は、検査結果と九州大学病院の医師が診療業務支援システム「医’sアシスト(イーズアシスト)」を介して行う事前問診で総合判定し、ウィズウェルネスに診断結果を通知することで、デジタルヘルス証明として発行される。デジタルヘルス証明の情報は、個人情報に当たるため、第三者による管理ではなく、個人の自己主権のもとで管理し、明確な本人の同意・意思に基づいて証明書を開示する仕組み。
新型コロナウイルスの検査は、空港検疫などで利用されている抗原定量検査とPCR検査の2種類を組み合わせ、抗原定量検査の結果が判定保留などの場合はPCR検査を実施する。
また、参加者の同意を得た後で、日立のPBIを搭載した非接触型の指静脈認証装置「C-1」で、偽造・改ざんやなりすましが難しい生体情報(指静脈)の情報を事前登録し、ウィズウェルネスで管理されている情報と連携。これにより入室時には、指を装置にかざすだけで認証が可能となり、紙やスマートデバイスによる本人確認や証明書の提示が不要となる。生体情報は復元できない形に変換して登録・認証し、生体情報そのものは都度削除し、どこにも保管しないため、個人情報が保護される。
赤坂Kタワーでの実証では、一連のオペレーションを検証したところ、技術面と運用面での有効性が確認されたという。
次回の実証では、デジタル庁が推進するVRS(Vaccination Record System:ワクチン接種記録システム)のワクチン接種履歴とのデータ連携、国際標準「スマートヘルスカード」に準拠したデータ仕様の実装を予定している。また、オフィスビル以外の場所(学校・病院・イベントホール・レストラン・観光地・建設現場)など対象範囲を広げる検討も行っていく。
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