「afterコロナでワークプレースの在り方が二極化」オフィス調査や企業事例からJFMA研究部会が考察:ファシリティマネジメント フォーラム 2021(2/3 ページ)
新型コロナウイルス感染症の世界的なまん延に伴い、人々の働き方に大きな変化が生じている。以前はオフィスに出勤して業務をこなすのが一般的だったが、コロナ禍では多くの企業で、リモートによる働き方の価値が見直され、導入が加速した。“密”を避けるために、出社率を大幅に下げた企業もある。これに伴い、企業におけるオフィスの在り方を模索する「CRE(Corporate Real Estate:企業不動産)戦略」も、大きく変容しつつある。
緊急事態宣言解除後の半年から1年で、テナント縮小や撤去か?
講演では、コロナ対策に取り組む企業の事例として、立地がよく賃料も高い都心の大規模ビルに入居する企業、外資系コンサル会社、自社ビルを複数保有する大手通信会社などの例を紹介。この他に、出社率の変化を踏まえ、異なるCRE戦略を採った3社の取り組みにも触れた。
■都心大規模ビル(Sグレード)に入居の企業
都心でSグレードのオフィスビルに入居する企業は、緊急事態宣言下での出社率が10〜20%程度で、コロナ以前に在宅勤務制度が周辺環境を含め、整っている会社が多い。そのためにコロナ禍であっても、リモートワークの状態を労せずしてそのまま継続できている。企業によっては、在宅勤務者に対し、モニターの貸与や手当の支給も行っている。
一方、商業ビルに入居する企業からは、「あえてセンターオフィスに行く理由がない」という声が挙がる。出社しても入居する店舗が閉店しており、活気が感じられないことがその理由だ。
商業ビルでは、緊急事態宣言が解除されると、当然ながらオフィスユーザーではなく、訪問者・観光客が増える。不特定多数の人が交じることを不安視するオフィスユーザーのなかには、賃貸契約の更新タイミングを見計らいながら、CRE計画を立てることが少なくない。
これを受け、ビル側からはリーマンショックや東日本大震災の時と同様に、半年から1年の間に撤去・縮小の動きが出始めるとの情報がある。吉井氏は「既に、複数フロアに入居するテナントの撤去が決定したという話も聞いている」と補足した。
一方で、緊急事態宣言中でも、90%ほどの出社率に戻している企業もある。出社率はコロナ対策を考える上でのベースとなるが、各社の環境や考えによって二極化の状態にある。
■外資系コンサル会社
ある外資系コンサル会社のケースでは、社員のメンタルや会社とのエンゲージメントのケアをする企業の取り組みを披露。この会社の出社率は15%程度だが、即座にオフィスの改造などを行うのではなく、定期的にトップのメッセージを配信するなどで、企業文化の醸成や社員の心をつなぎとめる施策を重視している。
ただ、センターオフィスは企業文化の体現やコラボレーション、エンゲージメントに重要なことは変わりがない。このため今後は、用途変更や各機能の面積比率などが検討されている。
■自社ビルを複数保有する大手通信会社
大手通信会社のCRE戦略の例では、分散型社会の実現を目標に掲げている。現在、在宅率70%(在宅率30%)の達成を目指してだいるが、コロナ収束後もこの出社率をキープすることを前提に、建物に対する所属人数を再定義している。
これまで、エレベーターやトイレなどの数は、快適性を確保するために決めていた。しかし、現在、実際の出社率はそれに比べて低い。となれば、再定義によって最適な数や人数を割り出すことができる。吉井氏は「再定義を行ったところが発見」と評価した。
この試みでは、ビルに対する所属人数を増やせる。そこで、これを機にオーバーヘッド組織の拠点分散を一元化し、集約することで空いたスペースを放出する動きもある。
リモートワークやセンターオフィスが解消すべき課題のリストとしては、例えばリモートワークでは、働く側の状況が外から見えにくいという問題がある。一方、センターオフィスは、出社する意味の再定義やエンゲージメントを強化する必要性がクローズアップされている。
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