コンクリートの締固めをAIで判定するシステムを開発、安藤ハザマ:AI
安藤ハザマと金沢工業大学は、深層学習を活用した「コンクリートの締固めAI判定システム」を開発した。安藤ハザマらは、新システムのプロトタイプを用いた実地試験をコンクリート製品工場で実施し、AIによる締固めの完了および未完了の判定結果をリアルタイムに表示できることを確認した。今後、安藤ハザマは、判定プログラムにさらなる改良を施し、同社のコンクリート製品工場(屋内施工)への展開を目指す。
安藤ハザマと金沢工業大学は、深層学習を活用した「コンクリートの締固めAI判定システム」を開発したことを2021年6月21日に発表した。
コンクリート専門家の判断をベースにAIが判定
コンクリートは、構造物の設計および施工条件に合わせて所要の品質(圧縮強度、耐久性など)が得られるように配合選定が行われる。しかし、適切に選定されたコンクリートであっても、適切な打込み・締固めが実施されないとコンクリートの性能は最大限には発揮されない。一方、コンクリートを締固めする作業の完了時期は、作業従事者の経験に基づく目視評価を基に判断されており、その判断は人によって異なるという課題があった。
また、近年、業界では、建設業就業者の減少による労働力不足や熟練工の減少による品質低下が懸念されており、コンクリート工の生産性向上と作業従事者の力量に依存しない技術の開発が求められている。
コンクリートの締固めAI判定システムは、従来の目視評価を土台に判定手法の代替として、深層学習に基づく判定手法を提案するもの。具体的には、コンクリート専門家の判断をベースに、完了判定をAIが深層学習によって繰り返し学習することで、コンクリートの専門家による完了判定に近い判断を実現する。
さらに、判定プログラムを搭載したPCにビデオカメラで撮影した締固めしているコンクリート表面の映像を転送し、リアルタイムに締固め判定を行い、その結果をモニター上へ映す。加えて、撮影した映像は、システムが、メッシュ状に自動分割(プロトタイプでは24分割)してメッシュごとに判定し、締固め未完了の場合は赤色、締固め完了の場合は緑色に枠の色を変化して表示する。
安藤ハザマによる現場での試験では、今回のシステムで、コンクリート締固め作業に従事する技能者に、AIを用いた締固めの完了判定結果をリアルタイムに示せた。これで、作業従事者の力量に依らない締固め判定ができるようになり、コンクリートの施工品質が安定した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コンクリ表面の品質、タブレットでピタリと分かる
日本国土開発と科学情報システムズは「コンクリート表層品質評価システム」を開発した。表面気泡の状況を自動的に判定して施工品質の改善につなげる。ディープラーニング技術を用いることで、従来の画像処理では到達できなかった精度に達した。 - AIがスマホの写真から“外壁仕上げ材”11種を自動で判定、ジャストが無料サービス開始
建設業界のさまざまな課題をAIによる解決を目指しているジャストは、スマートフォンなどで撮影した画像から外壁材の種類を判別する無料サービスを開始した。 - AIと電磁波でコスト2割削減の非破壊検査、RC床版上面の損傷を自動判定
ニチレキとグリッドは、AIと電磁波で、鉄筋コンクリート床版上面の損傷箇所を判定する「smart 床版キャッチャー」を開発した。今までの熟練技術者が行っていた調査に比べ、調査比で約2割のコストダウンが図れるという。 - 覆工コンクリートの打設時にセントルに働く圧力を見える化する新システム、戸田建設
戸田建設らは、山岳トンネル覆工コンクリートの打ち込みによりセントル(移動式鋼製型枠)に働く圧力を見える化する「スマート圧力センサーシステム(仮称)」を開発した。新システムは、セントルに作用する多様な箇所の圧力許容レベルを判定するだけでなく、打ち上がり高さと偏圧影響の有無を管理できる。 - 鋼材・コンクリートの欠陥を非破壊で検出、画像化もできる新技術
島津製作所は超音波と光で鋼構造物やコンクリートの欠陥を非破壊で検出・画像化する新技術を開発した。国内のインフラ老朽化が課題となる中で、インフラ維持管理における検査工程の省力化・効率化に貢献できる技術だという。今後さらなる研究開発を進め、3年後の事業化を目指す方針だ。