林野庁のドローン活用事例、森林面積の計測・災害対応・資材運搬を効率化:Japan Drone2021(1/2 ページ)
林野庁では、森林保有者への補助事業で、2020年4月に従来の規定を改訂し、森の位置図と施業図の作成や現地写真の取得、現地の調査でドローンを使えるようにして業務を効率化した。
林野庁 森林整備部 整備課 造林間伐対策室長 諏訪実氏は、建設分野のドローンが集結する国際展「Japan Drone2021|第6回−Expo for Commercial UAS Market −」(会期:2021年6月14〜16日、幕張メッセ)で、講演「森林・林業分野におけるドローンの活用」を開いた。
会場では、諏訪氏が国内における樹林の現状や森林保険の損害調査、森を対象とした整備事業のドローン活用事例を紹介した。
2016年に国有林の被災状況確認でドローンの活用をスタート
国内の森林面積は、2362万ヘクタールで国土面積の約60%を占める。うち、約60%の1335万ヘクタールは自然に形成された天然林がカバーし、残り約40%は人力によって植栽された人口林となる。
上記の森林を国が管理する国有林と民間が所有するものに区別するために、これまで林野庁では、航空写真を撮影し、写真データの販売もしてきた。国有林では、台風や地震などで被害を受けた際の現地調査で、2016年にドローンを初めて活用し、搭載されたカメラで対象となる森を撮影して、被災状況を確認した。その後、自然災害の影響を受けた森林の現場事務所を点検する際にもドローンを利用し損傷を確かめるようになった。
上文に記載の通り、林野庁では2016年にドローンの使用をスタートしたが、諏訪氏は、「システム的にドローンを利用した最初の事業は森林保険の損害調査だ」と振り返る。森林保険は、林野庁の外郭団体である森林研究・整備機構 森林保険センターが運営するもので、森林所有者があらかじめ掛け金をかけると、保有する森が自然災害を受けた時に、保険金が支払われるというサービス。損害調査では、被災により危険なエリアをスタッフが調べていたため手間がかかっていた。
解決策として、森林センターは2017年にドローンの活用を開始した。ドローンによる損害調査の手順は、まず被害を受けた森林でドローンを飛ばし、取り付けられたカメラで対象のエリアを撮り、取得した画像をオルソ化し、国土地理院の地理情報システム(Geographic Information System、GIS)とCADソフトを用いて面積を測定する。
次に、オルソ画像を使用し、自然災害を受けたエリアと被災していないエリアを比べて、木が何本倒れたかを測る。ドローンによる損害調査は、有効性を森林保険センターに認められ、2018年度に8件、2019年度に70件、2020年度に37件の損害調査でドローンが使われた。
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