土木学会が「ジャイロプレス工法」の技術評価証と報告書の英語版を発行:産業動向
土木学会は、技研製作所の圧入工法「ジャイロプレス工法」に関する技術評価証と報告書の英語版を発行した。
技研製作所は2021年3月17日、回転切削圧入することで硬質地盤などの地中障害物を貫通し、強固なインプラント構造物を構築する独自工法「ジャイロプレス工法」について、土木学会が2020年に発行した技術評価証及び報告書の英語版「Technical Evaluation for the Design and Construction Method for Rotary Press-in Piling Method(Gyropress Method):回転切削圧入工法(ジャイロプレス工法)の設計法・施工法に関する技術評価」を作成し、発行したことを明らかにした。
2001年度から技術評価制度を運用する同学会が、技術評価証の英語版を作るのは2例目で、評価内容などをまとめた報告書とセットで英語化するのは初の試みだという。
海外の提案活動で技術評価書は説得力を発揮
土木学会は現在、日本の建設技術の国際展開を推進しており、オリジナリティーのある技術が求められているなかで、ジャイロプレス工法は世界で活躍が期待できる独創的技術と評価を受けた。土木学会による評価を技術的裏付けに、英語で示すことで海外における工法普及の後押しが期待される。
土木学会の技術評価は2020年、全国圧入協会(JPA)の依頼に基づき検証された。具体的な審査は、地震や港湾、道路、鉄道、杭などを専門とする6委員から成る「『回転切削圧入工法(ジャイロプレス工法)の設計法・施工法』に関する技術評価委員会」によって、ジャイロプレス工法で圧入した杭の支持力を推定する「支持力評価式」が、実際に荷重を加えて杭の支持力を調べる載荷試験結果を適切に再現していると認められた。
その結果、土木学会は2020年3月、技術評価証と報告書を発行。道路橋梁(きょうりょう)の基礎部といった鉛直支持力が求められる案件でも活用範囲が拡大し、提案の幅が広がった。今回の英語版は、その際の技術評価証と報告書両者を英訳したもの。
技研製作所によると海外の提案活動では、設計会社から支持力の理論的な裏打ちについて説明を求められるケースが少なくないという。その際、日本の土木学会による技術評価証と報告書を有力な参考資料として提示することで、説明に強い説得力を持たせることができる。設計会社としても発注者にジャイロプレス工法を積極的に提案する材料となり、ジャイロプレス工法がグローバルで拡大することが見込まれる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- インフラメンテナンス×AI(3):“品川区”が試行するICT/AIの区道維持管理、従来手法より2.5倍も異常検知
東京・品川区は、道路管理者として行っている区道の日常点検に、ICTやAIを導入し、将来にわたり持続可能なインフラ維持管理体制の構築を進めている。実用化すれば、異常発見時に遅滞なく応じられるようになるだけでなく、ICT点検の結果に基づく1次現場対応のアウトソーシング化で職員の事務軽減、住民からの道路に対する要望への適切な対応などが期待される。 - インフラメンテナンス×AI(2):AIの本質は「最適化手法」にアリ!インフラメンテ最大の壁“暗黙知”を言語化するには?
国内の土木分野では、インフラの老朽化という喫緊の課題が差し迫っており、道路橋を例にとれば建設後50年に達するものが6割にも及ぶとされている。建設業界での慢性的な人手不足の解消と、必要とされる事後保全から予防保全への転換で必須とされる新技術と期待されるのが「AI」だ。土木学会とインフラメンテナンス国民会議のシンポジウムから、インフラメンテナンス領域でのAI活用の最新動向を追った - インフラメンテナンス×AI(1):インフラ維持管理にAIを活用する方法論と最新動向、立命館大・野村教授の講演から
国内の土木分野では、インフラの老朽化という喫緊の課題が差し迫っており、例えば道路橋では建設後50年に達するものが6割にも及ぶとされている。建設業界での慢性的な人手不足の解消と、必要とされる事後保全から予防保全への転換で必須とされる新技術と期待されるのが「AI」だ。土木学会とインフラメンテナンス国民会議のシンポジウムから、インフラメンテナンス領域でのAI活用の最新動向を追った。 - Autodesk University Japan 2019:【限定全公開】3.11復旧工事など災害対応で活躍したCIM、岩手・地方建コンの奮闘
建設コンサルタント業務を手掛ける昭和土木設計は、2014年からCIMへの取り組みを進めてきた。その取り組みの成果が橋梁設計における「3D完成形可視化モデル」だ。ドローン(UAV)を使って3D空間の計測データを取得。このデータに基づき3Dの地形モデルを作成し、3次元の設計モデルと連携・統合することで、関係者間の情報共有の精度を高めた。 - Autodesk University Japan 2019:「CIM導入には社内の“パラダイムシフト”が必須」、独自の資格制度など八千代エンジが説く
「Autodesk University Japan 2019」の中から、総合建設コンサルタント・八千代エンジニヤリングのセッションをレポートする。同社は、2015年から全社を挙げて、BIM/CIM推進に取り組んできた。講演では、CIM推進室 室長 藤澤泰雄氏がこれまでの歩みを振り返るとともに、CIMの導入に舵を切った5つの理由を示し、目標とすべき技術者像について説いた。 - 木の未来と可能性 ―素材・構法の発展と文化―(1):【新連載】木質材料の変化と多様性:製材からエンジニアードウッドの発展の歴史を振り返る
本連載では、一級建築士事務所 鍋野友哉アトリエ/TMYAを主宰する一級建築士の鍋野友哉氏が、近年環境に優しいなどの理由で関心を集める木材にスポットライトを当て、国内と世界における木造建築の歴史や最新の木造建築事例、木材を用いた構法などを紹介する。連載第1回となる今回は、多種多様な木質材料の変遷を振り返る。