「日常の延長線上にある防災」積水ハウスが示す、自然災害の時代を生き抜くヒント:第5回 住宅・ビル・施設 Week(1/3 ページ)
現在、住宅の堅牢性に関する技術は、台風や地震などで簡単には倒壊しないレベルに到達している。しかし、災害の発生そのものを止めることはできない。防災・減災で重要なのは、日常の生活の中で常に災害を意識して準備を怠らないことだ。
積水ハウス 総合住宅研究所 構造研究開発G グループリーダー 部長 東田豊彦氏は、「第5回 住宅・ビル・施設 Week」(会期:2020年12月2〜4日、東京ビッグサイト)で、「住まいと暮らしの中の備え〜毎日の延長線で今できる災害対策〜」と題する特別講演を行った。
東田氏は、「現在の建築物は、ハード面の技術はほぼ出来上がっている。しかし、日本では災害が多発しており、重要なのは、そこに住む人が安全や安心に対してどう考えていくか」だと話す。講演では、積水ハウスが掲げる『「わが家」を世界一幸せな場所にする』というグローバルビジョンの実現に向けた災害に関するいくつもの実例を示した。
次の30年に向け、『「わが家」を世界一幸せな場所にする』
積水ハウスは、2020年に創業60周年を迎えた。東田氏は、次の目標とする2050年までの30年ビジョン、災害に強い家の構造上のポイント、災害後も住み続けるために必要なことの3項目について説明した。
1960年に設立した積水ハウスだが、最初の30年は安全安心な暮らしを実現する構造体の堅牢性を重視していた。その後、1990年から2020年までは断熱性能といった快適性を追求。
東田氏は、「当然ながらハウスメーカーとして、常に進化していかなければならない部分はある」としながらも「今では、こうした技術はおおむね完成している」と述べ、ハードウェアとしての住宅は、ほぼ完成の域に達しているとした。
今後は、「人生100年時代の幸せを考えていきたい」と語り、今後、30年のグローバルビジョンを『「わが家」を世界一幸せな場所にする』というフレーズで表した。ビジョンの中心となるのは、「住を基軸に、ハード・ソフト・サービスを提供するグローバル企業」というスローガン。
2050年までの30年、あるいは人生100年時代を考える際、日本で事業を展開する上では、災害を考慮しなければならない。現在までの100年を振り返っても、1923年に関東大震災が起き、戦中・戦後には東南海・南海といった大地震もそれぞれ発生した。さらに1995年には阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震が生じ、その後も東日本大震災を筆頭に大規模な地震が続いた。
実は登壇した東田氏は、1995年には兵庫県西宮市に在住しており、兵庫県南部地震を経験している。地震発生時に和室で就寝中だった東田氏は、倒れてきた2本のタンスの直撃から奇跡的に頭部を守ることができたそうだ。この実体験から、強い家に必要な耐震性能や免震といった技術の開発に取り組んできた。そして、この思いは現在「暮らし方」にも及ぶという。
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