日立、大雨時の緊急放流回避に向けたダム放流計画自動作成技術を開発:ICT河川管理
日立製作所と日立パワーソリューションズは、大雨による河川氾濫の最小化に向けて、ダム放流計画の自動作成技術を開発した。下流のピーク流量を最大約80%低減、浸水を防ぐ放流計画を10分以内に立案する。
日立製作所と日立パワーソリューションズは、大雨による河川氾濫の最小化に向けて、ダム放流計画の自動作成技術を開発した。緊急放流を回避しつつ、下流のピーク流量を最大約80%低減、浸水を防ぐ放流計画を10分以内に立案する。
同技術では、「プログレッシブ動的計画法」という新たな数値最適化手法を用いることで、ダム下流の河川流量を可能な限り抑える放流計画を自動作成する。具体的には、連携する複数のダム同士の放流量とタイミングを、最初はごく粗く計算し、その後は徐々に細かい計算を繰り返すことで、短時間で放流計画を算出する。作成する放流計画は、大雨に先立ってダムの水位を下げる「事前放流」と、上下流の複数のダムの貯留や放流のタイミングをずらす「ダム連携」の対応を組み合わせたもので、ダムの放流量を急激に変化させない「放流の原則」などの現場のルールを順守している。
同社が河川上流にある3つのダムを対象にシミュレーションを実施したところ、一般的な「事前放流」や「ダム連携」を実施しない放流計画では、ダムが満杯になり緊急放流に至ったのに対し、新技術では、100年に一度の規模の大雨でも緊急放流を回避しつつ、下流のピーク流量を最大で約80%低減し、浸水を発生させない計画を10分以内に立案できることを確認した。1000年に一度の規模の大雨で浸水が発生する場合も、浸水面積を95%低減できるとした。
これまで、大雨による河川氾濫を防止するには、技術者が雨水のダム流入量を観測し、その都度ダムの放流量を決めることが一般的であった。しかし、緊迫した状況の中、現場の制約やルールを順守しながら最適な放流計画を短時間で立てることは、経験を積んだ技術者であっても難しい。今回の技術によりこれらの課題解決を目指す。
今後、日立パワーソリューションズは同技術を活用して、放流計画立案などのダム管理業務を支援するソリューションを2021年度に提供開始する予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 国民の約50%が災害への備えがほとんど無し、“防災力”が低い理由とは?
内閣府の発表によれば、今後30年以内に、マグニチュード7クラスの首都直下地震が70%の確率で発生すると予測している。また、気象庁が運用する自動気象データ収集システム「アメダス」の雨量情報をみると、近年1時間あたりの降水量が50ミリを超える豪雨が増えていることが分かる。大地震や大雨による河川の氾濫などへの対処が急務となっている現状を考慮し、パナソニック ライフソリューションズ社は防災対策Webセミナー「毎日が、備える日」を開いた。 - 土砂災害の対策に効く傾斜監視システム、遠隔点検で省人化を実現
本連載では、京セラコミュニケーションシステム LPWAソリューション事業部 LPWAソリューション部 LPWAソリューション1課の海野晃平氏が、Sigfoxの概要や現場での活用事例などを説明。第2回となる今回はSigfoxネットワークを利用したIoTデバイス・ソリューションについて解説する。 - 夜間時でも河川の水位変化を検知する「画像解析技術」、日本工営
日本工営は、定点観測用カメラで撮影した画像を解析して、夜間時の河川変化を検知する手法を研究開発している。この技術では、夜間に取得した画像から輝度分布を解析して自動で水位の上昇を検知する。水位の解析技術は、既に2カ所で施行運用を行っているという。 - 土砂災害の復旧準備を最短化、“西日本豪雨”の被災地を「UAVレーザー測量」で調査するテラドローンに聞く
日本列島を立て続けに襲う大雨と地震。これに伴い甚大な被害をもたらすのが、土砂崩れ・地すべりなどの「土砂災害」だが、その災害状況の計測も2次災害のリスクから困難を極める。そこで、現在活躍の場を広げているのが「UAVレーザー測量」である。最短で即日にフライト計測し、中一日で測量精度1/500に基づく地形データの提出が可能だ。“西日本豪雨”の土砂災害状況を調査するテラドローンの関隆史、河越賛の両氏に話を聞いた。