【第11回】「設計BIM全社移行を実現する社内教育の秘訣」(BIM導入期編):BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(11)(2/3 ページ)
前回は、「BIM啓蒙期」での社内教育について説明した。BIM啓蒙期は、種々の工夫を凝らし、BIMにいかに興味を持ってもらい、少しでも社内でのBIM活用を促し、業務移行のための実施検証を行うべく奔走した過渡期だった。しかし、2017年からの“全社BIM移行”の決定を受けて、本格的な「BIM導入期」に移ることになる。「BIM導入期」では、まず設計のBIM移行を進めた。2次元CADの文化を捨て、BIMに完全移行するためには、担当者だけでなく、管理職や派遣社員・協力会社まで、縦横に徹底して教育することで、やっと設計の完全移行が見えてきた。今回は、この「BIM導入期」における社内教育がどのようなものであったかを紹介し、BIM移行というものは何か、その本質を追究していく。
BIMの能力指標となる「BIM習熟度」について
2020年下期のBIM習熟度目標は下図のように設定した。最高点の100点は、企画〜実施設計で、全ての内容を理解し、BIM 360を駆使しながら、自分の技量だけで業務を完遂できるところまで到達した場合の評価となる。
また、意匠の管理職で30点は、Revitのデータを開いて、BIMモデルや図面をチェックしたり、印刷などを行えたりするレベル。意匠の主任層で68点は、実施設計で協力会社に設計作業を依頼することが多い場合に必要となる習熟度である。もちろん、全員が100点を目指すのが望ましいが、業務内容によっては使わない機能もあるので、各部門や役職に応じた設定にしている。下図が、意匠の習熟度調査の内容である。
下記のように、地区ごとで習熟度調査を集計し、現在のスキル獲得状態を「見える化」することで、全国各地区の状況が判明し、どのような教育が必要かの対策を地区と連携して検討し、実施している。地区により差が出ているが、全般的にまだ習熟度レベルを上げる必要があると考えている。
Revitによる設計作業は、習熟度が高いほど効率は良くなる。初期の習熟度が低い状態では、設計期間も長くなる傾向にあるが、習熟度が高ければ短期間に設計作業を終了することができる。実施設計を協力会社に依頼する場合も、習熟度が高い担当者は、BIM標準をよく理解できているので、協力会社側の作業効率も良くなるとの報告も聞いている。
社内研修の内容について
最初は、研修所にPCを用意して研修を行っていたが、頻度が多くなってきたために、東京・大阪にBIM教育専門のBIM研修センターを用意した。BIM研修のためのソフトがインストールされており、同時に30人の研修が行える施設である。
意匠設計での研修実績は、約3年間で1800人を越える。いくつか研修の種類があり、1泊2日の研修と日帰りの研修を用意している。これまで、習熟度を上げるために、東京・大阪で毎日のように研修を繰り返し、派遣社員や協力会社も同じように教育を受けた。意匠と工事の研修が多いのは、関連する担当者が多いからである。意匠で800人、工事で1300人に対し、構造設計・設備設計・見積はそれぞれ200人程度のため、研修回数に違いが出ている。
2020年になって、新型コロナウイルスの影響で、研修センターでの研修をあまり実施することが困難になった。研修の補助教材として用意していた“eラーニング”が、今では主な研修手段となっている。
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