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BIMトップランナー達が“国内BIMの標準化”に向け熱論、「共有パラメーター」がなぜ不可欠か?設備BIM最前線

ここ数年、建設業界を取り巻く諸問題をBIMで解決するための動きが、国土交通省の「建築BIM推進会議」を中心に活発になってきている。だが、BIMの現状は、設計〜施工〜維持管理の各フェーズで、情報をスムーズに受け渡せない“不連続”が発生し、最大限に生かすまでには至っていない。とくに設備設計は顕著で、普及している2D/3DのCADは、情報を受け渡すことに力点を置いて開発されているわけでは無いため、意匠・設備・構造の一気通貫での活用は困難を極める。しかしその点、Revitであれば、一貫した統合モデルを扱えるため、部分最適ではなく、“全体最適”が達成できるという。事実、Revitのユーザー会は、国の動きに呼応して、業界団体やCADベンダーの先陣を切り、既に共有パラメーターの標準化に取り組んでいる。業界のキーマンが参集した設備BIMセミナーから、Revitでなぜ全体最適が実現するのかを探った。

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 オートデスクは、「建築設備ワークフローの設計/施工/維持管理の各段階において、どのように情報の受け渡しを行えば全体最適のBIMが実現できるか?」をテーマに、国土交通省の講演と、建築業界の第一線で活躍し、建築BIM推進会議のコアメンバーでもあるBIMリーダーや設備設計者・施工者が忌憚のない意見を交わしたパネルディスカッションをオンラインで開催した。

 本稿では、設備BIMセミナーをBUILT編集部が取材した中で、Revitの特性の一つ“共有パラメーター”が可能にする意匠・構造・設備のBIM統合の在り方と、その実現のために何が必要かに迫った。また、今回の記事公開とともに、設備設計BIMの特設ページもオートデスクのWebサイトにオープンしたので、併せて読むことで理解を深めてもらいたい。

建築BIM推進会議の最新動向

 最初に登壇した国土交通省 住宅局 建築指導課 課長補佐 田伏翔一氏は、2019年6月に創設された「建築BIM推進会議」のこれまでの取り組みを紹介した。

 国交省では、BIMが将来担う役割について、ライフサイクルで一貫して利活用されることでデータベースに蓄積され、AIやIoTとも連携したプラットフォームとなり、業界全体の生産性向上に寄与することを期待している。しかし、現状では、建築関連団体へのヒアリングによれば、設計・施工で一定程度の導入は進んでいるが、双方が連携されていない実態が明らかになった。設計から施工へと入力情報が引き継がれていないため、当然ながらその先の維持・管理では情報をイチから入力しなければならず、BIM活用の妨げとなってしまっている。


建築BIM活用状況及び建築BIMの課題 出典:国土交通省

 こうしたBIMの一気通貫などの課題に対し、国は建築BIM推進会議を22の関係団体とともに国交省内に設置。推進会議では、建築業界の共通認識としてBIMで目指す将来像と、実現に向けた取り組み及び工程を整理し、2019年9月に公表した。

 BIMの将来像としては、「いいものが」「無駄なく、速く」「建物にも、データにも価値が」を掲げ、高品質・高生産がもたらされ、データが積み重なれば高効率なライフサイクル、さらに社会資産として建築物の価値拡大にもつながることを見込んでいる。

 そのためのアプローチ方法では、民間が多数を占める建築領域では官民の役割分担、トップランナーで先行してその後に一般化、国際競争力のためにガラパゴス化を避ける――の3つを打ち出している。

 一方、課題解決に向けたロードマップの工程表では、BIM情報を適切にプロセス間で受け渡すためのワークフロー整備やBIMモデルに紐(ひも)づく属性情報の標準化、建築確認検査、積算の標準化、情報共有基盤の確立、BIM人材の育成、ビッグデータ化やAI・IoTとの連携の計7項目から成り、それぞれで各項目が連携しながら、検討〜試行〜実装を進める道筋を示した。

 この工程表が策定されたことで、推進会議内には国交省が主体となる「建築BIM環境整備部会」をはじめ、7項目のうち5つの部会を先行して設け、2019年10月から本格始動している。

 「建築BIM環境整備部会」での議論の結果、建築BIM推進会議の一つの成果として2020年3月31日には、「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」を公表。ガイドラインでは、施工のフロントローディングも含めた設計・施工・維持管理での標準ワークフローを提示した他、次のプロセスへのBIMデータの受け渡しルール、連携によってもたらされるメリットを明文化した。このうち、標準ワークフローでは、企画段階でPM/CMが発注者へBIMのメリットを説明し、BIM導入を促して、維持管理での活用も見据えた共通ルールを先に決めておくことが、BIMの情報の受け渡しを成功させるための肝と位置付けている。


BIMの標準ワークフロー 出典:国土交通省

 また、設計・施工・維持管理の各プロセスで、データを渡す際の課題に対しては、維持管理段階での活用を前提として、設計BIMをベースに施工段階での設備情報も付与した「維持管理BIM」の作成と、維持管理BIMで使用する情報や入力ルールを設計・施工で事前に共有しておく「ライフサイクルコンサルティング業務」を新たに定義付け、必要性を説いている。

 今後について田伏氏は、BIM建築プロジェクトの効果検証や課題分析を目的に、国が一部費用を補助するBIMモデル事業を2020年6月に選出したことを踏まえ、「第1版のガイドラインに基づき、実際の建築プロジェクトで試行していく。各試行プロジェクトの経過報告は秋ごろをめどに、その後、結果報告を年明けに予定し、2021年3月に開催する第6回推進会議でとりまとめる」と語った。

Revitユーザー会「RUG」での設備BIMの取り組み

 次に、Autodesk Revitのユーザー会「RUG(Revit User Group)」の活動について、各タスクフォース(TF)のリーダーが報告。まず、2020年度から会長に就任した吉原和正氏(日本設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ BIMエンジニア)は、新体制下での各ワーキンググループ(WG)の方向性を示した。

 RUG新体制の方針は、意匠・構造・設計でのミッシングリンク(データ流通の血栓)解消を継続して目指し、建築BIM推進会議などBIM関連の団体の方針に則(のっと)り、先陣を切ってRevitに5つのテーマを実装することを目標としている。5つのテーマとは、1.意匠・構造・設計でのデータ連携、2.ファブ・メーカー連携推進による施工への展開、3.サンプルモデル活用による具体例への展開、4.共有パラメーターの標準化、5.次世代へのバトンタッチ。

 とくに注力しているデータ連携では、「実務を阻害しない程度に、最低限の(意・構・設の)共有パラメーターを定めていく。テンプレートやファミリの整備を進め、外部のベンダーやメーカー、ファブリケーションと密に連携して、Revitの活用を広げていくつもりだ」(吉原氏)。

 WGのうち、設備WGでの成果としては、設備(MEP)ジェネリックファミリやテンプレート、ファミリ仕様書、共有パラメーターといった標準ライブラリをオートデスクのWebページ上に公開。無償提供したテンプレートなどを表計算ソフトと連携し使用することで、情報をRevitに一元化することが可能になり、基本設計や実施設計で共有しながら業務を進めることができるようになった。


吉原氏が語るRUGの標準化の取り組み

 これからの設備BIMの構想については、設備確認申請タスクフォース(TF)リーダーの焼山誠氏(大林組 本社デジタル推進室 iPDセンター 制作第二部 部長)が紹介。

 意匠と設備がBIMで連携すれば、建物の情報を用いることで、設備がどの程度のスペックが必要かも決められ、各階の空間(部屋・スペース)情報は、空調機などの製品選定にも役立つ。開発中のRevit連携アプリケーションでは、空調・非空調エリアを自動で生成する省エネ計算や設備情報を取得するために、設備機器の情報が掲載されているメーカーWebサイトとの連動による機器仕様の自動取得も検討しているという。


焼山氏が語る意匠と設備のBIM連携で可能になる設備機器の選別

 設備ファブリケーションTFリーダーの谷内秀敬氏(新菱冷熱工業 技術統括本部 BIMセンター 専任課長)は、「設備サブコンで施工図が描ける人、施工会社で図面を読みこなせる人材が減ってきている。解決のために、設備サブコンがファブリケーションというデジタル情報を現場に渡し、ICTを駆使することで、質を維持しつつ、効率的に仕事をしてもらいたいとの思いがTFを立ち上げたきっかけだった」と語った。

 設備ファブリケーションTFでは、配管・ダクト部材をRevitの製造用BIMパーツとして使うことが出来る“Item”というデータを作成することで、製造の加工機まで情報をつなげていくことを目標にしている。配管、ダクト、付属品などのItemを日本の規格に合わせ作成しデータベースを構築することで、紙ベースの施工図に替わるデジタルの情報を設備の施工会社に渡せるようになり、現場のDX(Digital transformation)がもたらされる。


谷内氏が語る設備ファブリケーションの実装までの展開

 Revitで自らプログラミングを組んでツール開発する“Dynamo”とアドオンツール“Extension”を扱う、DynamoTF&ExtensionTFリーダーの吉永修氏(日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ BIMエンジニア)は活動報告で、オートデスクが提供するRevitの日本用Extensionである「REX J」の機能確認や機能要望やDynamoサンプルの作成・検証を行っている以外にも、「機能追加に対するユーザー要望を集め、Extension用アドオン開発のサードバーティも交えて、どういった形で実装するかを意見交換している」と紹介した。

コロナ禍はBIM化/デジタル化を進める好機

 セミナーメインのパネルディスカッションでは、まず建築設備業界における課題について、新菱冷熱工業の谷内秀敬氏が、「技術継承ができておらず、近年の人手不足や新型コロナウイルス感染症の拡大により、技術不足を人手で補う人海戦術もまかり通らなくなっている。そのため、デジタル技術を活用することは避けては通れない。2020年は、コロナ禍で、これまでの旧態然とした建築業の在り方から一歩抜け出し、ICT活用が広がるチャンスになるのではないか」と問題提起した。

 次に、焼山氏は、働き方改革関連法で建設業でも2024年4月から労働時間の上限規制が始まることを受け、常設と現場で配置人数がどう変わるかを分析した。換算人数では、常設の場合は15人につき、1人を補充しなければならず、現場は5人または4人に対し、1人を追加で雇用しなければならなくなる。「法令順守のため、今のままでは雇用者数を増員しなければならなくなるが、BIMやデジタル化が解決の糸口になり得る。そのためには、情報共有ツールを使いこなすスキルや施工品質を維持するための教育など、個別会社ではなく、業界全体で取り組まねばならない」。


業界の第一線で活躍するBIMリーダーや設備設計者が参加したパネルディスカッション

 竹中工務店 東京本店 設備部 技術担当部長 平川直之氏は、「設計・施工・ファシリティマネジメント(FM)だけでなく、材料を作るメーカーもBIMへ移行するのが理想」と持論を展開。一例として、「或る配管加工業者では、自社ソフトだけで完結してしまっており、設備施工会社が整備するBIMモデルとは連携していない。BIMモデルから部材を製作するには、製作図や製作上の情報がBIMモデルに盛り込まれていなければならない」と提言した。

 また、「現場の施工管理でも、施工計画、施工図作成、機器発注、コスト管理、工程、出来形、機能確認などさまざまなステップが存在するがBIMとリンクしていない。だが、こうしたプロセスの情報を残していく観点からも、BIM化と各種情報のデジタル化は有効な手段となる。そのためには、社内だけでなく、(製造も含めて)社外ともつながる懐の広さを持って、BIM化を進めていくことが肝要だ」と要望した。

BIMで生産性を向上させるには?

 設備を取り巻く課題に続く、「BIMで生産性向上を実現するために何が必要か」のテーマでは、大和ハウス工業 技術本部 建設デジタル推進部 次長 伊藤久晴氏が独自の見解を述べた。

 伊藤氏は、設計〜施工〜維持管理で受け渡される情報が途切れてしまう“不連続”が起きているため、各段階で余分な作業時間が割かれていることに着目。建物のライフサイクルは日本では現状、設計・施工のBIMモデル作成が始まっている程度で、BIMを活用して建築資産のライフサイクル全体にわたり情報を管理するための国際規格「ISO19650」で例示されているデータ連携には、まだ到達していないとした。

 BIMによる一貫したワークフローの実現には、共通データ環境が必須で、大和ハウス工業では、その環境構築のために最適とするAutodesk BIM 360を活用している。

 これからの設備BIMを考える上では、伊藤氏が不可欠と見なすのが、「後追いBIMからの脱却」「BIMデータの連携」「維持管理データベースとの連携」。後追いBIMからの脱却は、CADを作成してからBIMモデル化を行うのではなく、設計段階で先にBIMモデルを作成し、必要に応じてBIMモデルから図面を出力する仕組みづくりを指す。

 具体的には、設備も専用のCADソフトではなくRevitでの設計に移行し、意匠・構造・設備が共通のBIM 360でワークシェアリングする。これの形であれば意匠・構造・設備が統合化された状態のため、変更があってもすぐに反映され、今までのように設備CADで修正し、IFC変換して意匠と構造のモデルに統合するといった煩雑さは無くなる。その先には、維持管理に必要な情報を集約したデータベースと連携することで、建築ライフサイクル全体の効率化が見込まれる。


伊藤氏が提唱するCDE(共通データ環境)を使った設備設計

 日建設計の吉永氏は、「国内のBIMをみると、建設プロセスの効率化や手戻り防止を想定したBIM化にとどまっており、多様な関連図書は、いまだにCADや文書ツールで作成されているため、一気通貫に至らないボトルネックになっている。散在している情報をBIMに集めれば、建物管理用のデータとして発注者の利用も広がっていくはず。ただし、BIMに格納するデータベースがバラバラでは得られるメリットは薄いため、今後は共有パラメーターや統一のテンプレートなど、同じデータベースを定義することが重要なカギになるだろう」と、部分最適化ではなく、ライフサイクル全体での最適化の必要性を強調した。

 RUGの会長として吉原氏は、「設備BIMを進めていく上でのポイントは、意匠とのデータ連携にある。意匠・設備間を共有パラメーターで連携すべきところを具体化し、BIMを導入する利点を示すことで、BIM活用をさまざまなステークホルダーに促し、国内の生産性向上に結び付けていきたい。その際に連携という面でRevitは、クラウド共有できるのも利点で、CADではファイルベースで分かれているので、最新データを探す手間が生じてしまうが、クラウド上で一元管理していれば手戻りも無くなるだけでなく、テレワークなどの働き方改革にもつながるだろう」と語った。


Revitによるライフサイクル一貫したBIM活用

 最後に「RUGの目標に、次世代へのバトンタッチを明記した。日本で意匠・構造・設備が連携できる仕組みを海外に先んじて作り、次の世代が諸外国との競争で優位に立てる基盤を確立できれば」と展望を語り、総括した。



取材を終えて――

 設備BIMセミナーを通して、Revitがなぜこれほどまでに、建築領域の第一線にいる方々に支持されているのかを理解した。その答えは、他のCADソフトウェアでは意匠・構造・設備がバラバラであり、部分最適にしかならないが、Revitであれば、意匠・構造・設備を一元的に扱え、“全体最適"が可能だからだ。さらに、M(モデリング)だけでなく、BIMの概念で不可欠なI(属性情報)を備え、データベースとしても機能するため、この点でもワークフロー全体の最適化がもたらされるためだ。

 その優位性があるからこそ、ユーザー会のRUGは、建築BIM推進会議の動きに合わせていち早く、意匠・構造・設備の共有パラメーター策定に着手できたのだろう。

 これからも、まだまだ縦横に広がりをみせるRevitの可能性と、RUGの先進的な取り組みが相乗効果となって、業界全体のデファクトスタンダードを確立し、設計の先にある施工や維持管理も含めたフロントローディングによる業務効率化や各段階のさまざまなステークホルダーにもRevitユーザーが拡大することで、真の全体最適化が叶うBIMの未来に期待したい。

 

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提供:オートデスク株式会社
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2021年1月8日

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